土星の衛星エンケラドスの海水に地球の生命に不可欠なリンが高濃度に含まれていることを発見したと、東京工業大などの国際研究チームが発表した。
英科学誌ネイチャーに15日、論文が掲載された。
地球の生命に似た地球外生命の存在を示唆するとともに、地球でどのように生命が誕生したかを解明する糸口になると期待されている。
エンケラドスは表面が氷に覆われ、その割れ目から内部にある海の水が宇宙空間に噴出している。
2017年まで活動していた米航空宇宙局(NASA)の無人探査機カッシーニは、海水の微粒子を捉え、一粒一粒の化学組成を分析した。
カッシーニが得た大量の組成データを独ベルリン自由大の研究者らが詳細に解析したところ、エンケラドスの海水には、地球の海水の数千倍から数万倍の高濃度でリン酸が含まれていることが分かった。
リン酸に含まれるリンは、DNAや細胞膜を構成するほか、生命活動に必要なエネルギーを媒介する物質で、地球生命の根幹に関わる必須元素だ。
地球外の水環境でリンが高濃度にある場が発見されたのは初めて。
さらに東工大の研究者らが宇宙の水環境を再現できる独自の装置で実験したところ、アルカリ性で高炭酸濃度であるエンケラドスの海水では、岩石からリン酸が溶け出して高濃度になることを突き止めた。
天王星や海王星の衛星など太陽系の外側の領域の氷天体の地下海でも、リンが高濃度になる水環境があると予測され、地球生命と物質的に似た生命が存在する可能性が高まった。
リンは現在の地球の海に極めて乏しい物質で、なぜリンを使う生命が地球で誕生したのかは謎に包まれている。
リンが高濃度になる仕組みが分かったことから、地球の生命が誕生した環境がどのようなものだったかの解明にもつながりそうだ。
東工大の関根康人教授(惑星科学)は「地球外生命の発見に向けてどんな物質を探せばよいか、指標を与える成果だ。われわれ地球生命と兄弟のような生命が存在するかもしれない」と話した。
https://www.sankei.com/article/20230615-L5JVS673IVIWVEOJAEKCBSSYSA/