
「ヤクザが炊き出ししてもいいのか?犯罪組織がそんなことするのか?」
代表的だったのがヤクザの代紋看板だった。私が大阪で勤務していたころ、アメリカのエージェントが来日したことがあった。私は現場視察を兼ね、捜査フィールドであった西成を案内することにした。
「これは何だ?」
歩いて回る途中、エージェントは突如足を止めて、そう尋ねてきた。彼が示したのはある西成の組事務所だった。どうやら外壁に飾られた代紋が気になっているようだった。
「これはヤクザ組織の紋章だ。ここはヤクザのオフィスだ」
私が返答するとエージェントは矢継ぎ早に質問を始めた。
「お前たちの国は法律でヤクザを認めているのか。ヤクザが犯罪組織と言うのであれば、ここはその巣窟じゃないか。お前たちの国は犯罪組織を受け入れているのか。近所の人たちは何も言わないのか」
彼の指摘もわからなくはないが、その感覚は日本では通用しない。とはいえ、私がいくら「ヤクザイコール犯罪者ではない」と説明してもエージェントは納得できない様子だった。
ヤクザの炊き出しも同様であった。1995年、阪神・淡路大震災が発生すると山口組はいち早く災害支援に回った。直系組長たちから資金を集めるとカップラーメンなどの食料品をはじめ、防寒着やカセットコンロなどを被災者に配り、神戸・花隈にある山健組本部前では炊き出しまで行った。しかし、海外のエージェントたちからすればボランティア活動を行うヤクザの姿は理解の範疇を超えたものだった。
「ヤクザは震災の時に炊き出しを行っていると聞いた。なんでそんなことをするのか。犯罪組織がそんなことをしていいのか」
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