本が消えていく? アメリカの学校でいったい何が?

アメリカでいま、学校の図書館から本が次々と撤去されています。

去年1年間に“禁書”となった本は実に1835作品。
「アンネの日記」やノーベル文学賞作家の作品なども対象になりました。

来年の大統領選挙に向けても争点の1つとなっているこの問題。

背景にあるのは“文化戦争”と呼ばれる価値観の激しいぶつかり合いです。
アメリカでいったい何が起きているのでしょうか。

教育委員会が“文化戦争”の最前線に

「こんな気持ち悪い本を子どもが手にする理由など1つもない」

「子どもにポルノを読ませる気なのか」

それは教育委員会の会合で耳にするような言葉ではありませんでした。

ふだんはほとんど傍聴者がいないというテキサス州ケラー市の教育委員会の会合。

この日は多くの保護者が出席し「学校の図書館に子どもにふさわしくない内容の本が置いてある」などと次々に不満を表明していました。

アメリカではいま、こうした保護者の声を受けて、特定の本を禁止し学校の図書館から撤去する動きが急速に広がっています。

去年1年間に禁止の対象となった本は1835作品。5年前の4倍以上です。“禁書”の動きはこれまでに全米の32の州、138の教育委員会で確認されています。

アメリカ図書館協会がまとめた全米各地の教育委員会で禁止の対象となった上位10冊には、同性愛者であることを自覚した少年が、自分のジェンダーを見いだしていく成長の物語など、性的マイノリティーをテーマにした作品が多く含まれています。

中には、ノーベル文学賞作家トニ・モリソンが1970年に発表した作品「青い眼がほしい」も入っていました。

白人に憧れて青い眼を持ちたいと願う黒人少女の葛藤を描き、白人主体の価値観を問うベストセラーですが、父親による性的暴行のシーンが問題視されました。

「子どもたちが洗脳されてしまう」

なぜ本を禁止するのか。

背景にあるのは“文化戦争”とも呼ばれる価値観の衝突。保守的な価値観とリベラルな価値観が激しくぶつかり合っているのです。

テキサス州北部のケラー市に住むデニース・リンさんは、“禁書”に賛成する1人です。冒頭の教育委員会の会合にも出席していました。

リンさんは性描写はもとより、性的マイノリティーを扱った本を学校の図書館に置くことは、そうした価値観を後押ししてしまうと感じていました。

子どもたちにリベラルな価値観をすり込もうとする行為にほかならないというのです。

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https://www3.nhk.or.jp/news/special/international_news_navi/articles/feature/2023/06/19/32270.html