「同級生たちはみんな幸福な、満ち足りた生活を送っているみたいに見えた。僕より能力も資質も劣る連中が、僕とは比べ物にならないほど楽しそうに暮らしていた。これは何かの間違いで、あなたは実の父親ではないはずだと、いつも想像していた。」
「今ではそんなことは思わない。そんな風には考えない。僕は自分に相応しい環境にいて、自分に相応しい父親を持っていたのだと思うよ。嘘じゃなく。ありのままを言えば、僕はつまらない人間だった。値うちのない人間だった。ある意味では僕は、自分で自分を駄目にしてきたんだ。」
村上春樹 1Q84 BOOK2〈7月‐9月〉後編