数々のトラブルが噴出する中古車販売業界の大手『ビッグモーター』。本誌はこれまで客の車のタイヤに穴をあけて保険金の不正請求を行っていた実態や、客の車の炎上事故の隠蔽など、さまざまな疑惑を追及してきた。そんな中、新たな疑惑が浮上している。それが「口コミサイトのサクラ疑惑」である。

【証拠画像】ビッグモーター本部から店長へ送られた「口コミ改善命令LINE」の中身

中古車は安いものでも数十万円、高いものでは数百万円という買い物になる。その店の評判について、正しい情報を知りたいというのは誰もが思うことだろう。その際に参考にされることが多いのが「Googleマップの口コミ」などだ。その心理に付け込むように、ビッグモーターでは社員自らが利用者を装って投稿する「サクラ行為」が、恒常的に行われているという。

先に書いておくが、Googleの口コミのすべてが顧客からの純粋な声かといえば、そうでないケースは多い。しかし、こういったサクラ行為が「組織的」かつ「ノルマ化」されていたとしたらどうだろうか。

以下のやりとりを見てほしい。これは実際にビッグモーターの営業本部長から全国の店長が参加するグループLINEに投稿されたやりとりの一部である。そこにはGoogleの口コミの上位と下位の店舗がリスト化されて貼り付けられており、営業本部長自らが評価の低い店舗を名指しで指摘している。関東地方の店舗に勤務していた元社員が内情を明かす。

「本部長からの指示は、あくまで『良い書き込みを増やすよう営業をかけるように』ということですが、基本的に声掛けをしても口コミを書いてくれるお客様は多くはありません。だからこれは、暗に『店のスタッフでなんとかしろ!』という本部からの命令なんです」

Googleでは個人でアカウントを無制限に作ることができる。そのアカウントで良い口コミを書いて「★5」をつければ、おのずと平均点は上がっていくわけだ。さらに口コミの平均点が低い店に対しては、ペナルティも存在するという。

「ビッグモーターでは社長と副社長が月1回、実際に全国すべての店舗を回って厳しいチェックを行う名物行事である『環境整備』があります。Googleの口コミ評価が低い店は、この環境整備点検で低い評価を付けられる傾向にあります。そうすると、その店のスタッフの給料にも影響することになります」(同前・元社員)

実際に「★3.1」という評価で、全国最低クラスとして名指しで晒されていた宇都宮の店舗の最新の評価はどうなっているのだろうか。その内容を見ると、10ヵ月前に一気に「★5」の口コミが50件近く増えていて、最新の評価は「★3.9」に大幅アップしていた。

ビッグモーターによるサクラ行為は、Google以外にも行われている可能性がある。たとえば中古車情報サイトの口コミには軒並み高い評価が並んでいるが、そこにも落とし穴があるという。実は大手のサイトはコメント内容への審査があり、「最低」「最悪」などカゲキな言葉は掲載されない仕組みになっている。また低評価の口コミは、事前に店舗に掲載の可否を確認することもある。同様の口コミサイトの運営に携わっていた経験を持つ編集者が語る。

「私が関わった口コミサイトでは、5点満点で3点以下の投稿は掲載しませんでした。クライアントに不都合な口コミは、最初から掲載しないんです。直接ビッグモーターの口コミサイトに関わっていたわけではないので、あくまでも推測ですが、実際に大きな被害を訴える口コミが投稿されても、ビッグモーター側が『そんな事実はない』と言えば確かめようがありません。中古車情報メディアにとってビッグモーターは年間掲載料も莫大な大得意先様でしょうから」

こうした疑惑について、ビッグモーターへ内容確認の問い合わせを行ったが、質問状の送付翌日から問い合わせフォームが閉鎖されてしまい、期日までに返答はなかった。

膨大なレビューの中から正しい評価を探すにはどうすれば良いのだろうか。有力なのはGoogleなどの一般ユーザーが直接、自由に投稿できる口コミサイトで、低評価のものまで幅広いレビューを参考にすることだろう。また気になった評価を見つけた際には、アカウントの投稿履歴を見ることも効果的だ。サクラ行為を行っているアカウントは、口コミ件数が1件である場合がほとんどである。高評価を鵜吞みにするのではなく、総合的に判断することが重要である。

高価な買い物だからこそ、色々な情報を収集し、判断材料にすることは間違った方法ではない。大切なことは情報がすべて正しいものだと妄信しないことである。口コミサイトは誰でも書き込めるものだからこそ、利用者を偽った声も紛れているかもしれないのだ。

取材・文:加藤久美子
https://news.yahoo.co.jp/articles/bf9f68e9283eb8d525dc05b440312c92a2a3e876