【6月22日 東方新報】スマホのアプリに登録しておくと、スーパーやパン屋などの閉店時間間際に売れ残り食品を定価の3分の1程度で買うことができる。中国では最近こんなサービスが広がっており、若者を中心に人気を集めている。
四川省（Sichuan）成都市（Chengdu）の唐佳琳（Tang Jialin）さんは、売れ残り食品専用アプリ「惜食魔法袋」や「米粒盒子」で自宅近くの店を探し、「売れ残り候補」の食品を予約することが昼間の日課となっている。売れ残りがあればスマホに通知が届き、夜8時以降に店へ向かう。パン屋では通常35元（約690円）程度のパンが12元（約236円）で、スーパーではヨーグルトや飲み物、お菓子などの詰め合わせを30元（約591円）未満で購入できる。どんな食品が手に入るかは売れ残り次第で分からないが、むしろワクワク感を楽しんでいる。
唐さんは「私の給料はそれほど高くなく、各種ローンがあるので、このサービスは生活を支えてくれています」と感謝する。
中国では数年前から、購入するまで箱の中に何が入っているか分からない「盲盒（ブラインドボックス、Blind Box）」が大ブームとなっている。日本の「ガチャガチャ」をモデルにしたといわれ、かわいいフィギュアのシリーズを販売するのが主流だが、ファストフード店や博物館でも独自のブラインドボックスを考案しており、一つの文化として定着しつつある。売れ残り食品の割安販売も形態が似ていることから「剰菜盲盒（売れ残り食品のブラインドボックス）」と呼ばれている。
売れ残り食品の販売はデンマークの企業が始めたアプリ「Too Good To Go」が最初とされ、日本でも同様のサービスが展開されている。中国では北京市や上海市、成都市、広州市（Guangzhou）など大都市を中心にサービスが広まり、各地で専用アプリが増えている。ネット上では「お店も私たちも助かるウィンウィン」「朝は寿司、昼はパン、夜は水ギョーザ。1日3食、売れ残り食品を食べている」と歓迎の声が上がっている。
中国では数年前から、賞味期限が残り1～3か月ほどになったスナック菓子やレトルト食品、インスタントラーメン、ビール、ジュースなどを専門に格安販売するディスカウントストアが全国各地に登場した。売れ残り食品の格安販売は、同じ発想の生鮮食品版とも言える。
中国政府は近年、食べ残し防止運動を展開しており、2021年には反食品浪費法を施行。過剰な注文をして食べ残した客に飲食店側が処分費用を請求でき、飲食店側も食べ残しを大量廃棄すると罰金を取られるようになった。食品ロスを減らすことは、無駄な生産と二酸化炭素（CO2）排出を減らすことにつながり、政府が推進する「低炭素社会」の推進にも貢献する。
ただ、サービスが広がるにつれて、「売れ残り食品なのに、料金が定価とそれほど変わらなかった」「弁当がおいしくない。衛生面に不安がある」といった声も出ている。「中身はお楽しみ」のブラインドボックスとはいえ、衛生面やサービスについては消費者が安心できる透明性が必要だ。(c)東方新報/AFPBB News
https://www.afpbb.com/articles/-/3469355
