就活の主戦場を日本に移した中国人留学生たちの苦難

 早稲田大学大学院・修士課程に在籍するA君はすでに30社にエントリーシートを送ったが、どの企業からも反応はなかった。

 東京大学大学院・修士課程に在籍するB君はインターンシップ先を探すのに大手有名企業100社に応募した。インターンシップは各社ともにかなり狭き門で、「99社に落とされて、ようやく最後の1社に拾われました」とB君は語る。

 C君は早稲田大学でファイナンス理論を学んだ日本語が堪能な人材だが、100社にエントリーシートを提出しても、面接の案内をくれたのはわずか1社だったという。

 昨年も、中国人留学生にとって日本での就職戦線は厳しいものだった。Dさんのハイレベルな日本語は、社内でのコミュニケーションもまったく心配はない。性格も快活で人からも好かれるタイプだ。しかし、約80社にエントリーシートを送っても日本企業には引っかからず、最終的に都内の中国資本の企業に入社した。

 日本での就職活動について、多くの中国人留学生は「大手有名企業に就職すること」を夢に描いている。国際的な比較をすれば給料水準は低いが、買い手市場の中国企業にある“首切り”や“重労働”もない、そんな日本企業が再評価されるようになってきているのだ。

 だが、近年の就職戦線では中国人留学生に「憧れの日本企業」が振り向いてくれないケースが出てきている。昨年就職が決まった筑波大学卒業のEさんは「自分の志望をランクダウンさせた企業で妥協するしかありませんでした」と振り返る。

 ビザの有効期限という問題もあり、就活は時間との戦いだ。ここに登場した“突き抜けて優秀”といわれる中国人材でも、その現実は決して甘くはないことが見えてくる。

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