「ホームレスは生活保護で助けられない」 家賃滞納理由に申請拒否

愛知県安城市の職員が昨年11月、生活保護を申請しようとした日系ブラジル人の女性(42)に虚偽の説明をした問題で、職員は「ホームレスだったら助けることはできない」と語り、申請を拒否していたことが分かった。女性は後に生活保護を認められたが、職員から「国に帰ればいい」などと差別的な発言を受けたとして、県弁護士会に人権救済を申し立てている。

三星元人市長が22日に記者会見し、職員の対応は不適切だったと謝罪した。市はこれまで、「通訳を介したため十分に意図が伝わらなかった」と説明していた。報道機関から対応時の録音データを示され、改めて内部調査を行ったという。

 市や代理人弁護士によると、対応した職員2人は、女性が県営住宅の家賃を滞納していると指摘し、「ルール違反して不法占拠して住んでいるから屋根があるだけでしょ。その実態をホームレスじゃないと言えるのか」と責め立てた。

 さらに「ホームレスだったら生活保護では助けられない」と申請を拒否し、「在留資格の『首切り』対象になっている」「最悪、強制送還になる」とも述べた。

 国は生活保護の内容で日本人と外国人の差異を設けないよう自治体に通知しており、ホームレス状態でも申請は可能としている。

 女性は約10年前に来日し、定住者の在留資格を持つ。夫が新型コロナウイルス禍などで失職。1歳と小学生の子どもを抱えて生活に困窮し、市役所の担当課を訪れたという。

 三星市長は会見で「職員に差別する意図はなかった」と述べたが、職員本人に確認したわけではないという。職員の処分も否定したが、記者からさらに問われると「(検証と再発防止のために設置する)第三者委員会で判断する。先ほど言ったのは(私の)気持ちだ」と説明を変えた。

 女性の代理人弁護士は取材に「生活保護行政の窓口である市役所が『強制送還』という言葉で脅したり、平気で制度の趣旨を間違ったりするのは言語道断だ」と述べ、市の対応を厳しく批判した。

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