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国内最高齢"奇跡のゾウ"と60歳飼育員が乗り越えた最大の危機とは?40年近くのバディ関係もあとわずか…
仙台市の八木山動物公園には国内最高齢のアフリカゾウがいます。このゾウを支え、40年近く、ともに過ごしてきた飼育員の男性とアフリカゾウとの日々を追いました。
■メアリーと南條さん
八木山動物公園アフリカゾウ舎から、
朝9時前、アフリカゾウが屋外に放たれます。
来園した子ども:
「おーいゾウさん」「ゾウさーん」
動物園にいるアフリカゾウは3頭。その内の1頭がメアリーです。
メスのメアリーは国内で最高齢のアフリカゾウ。56歳。人間でいえば80代半ばのおばあちゃんです。
メアリー
八木山にやってきたのは1983年9月。17歳で九州・宮崎県のサファリパークから引っ越してきました。それから39年…。
アフリカゾウとしては寿命に近い年齢になりました。
飼育員 南條幸夫さん:
「はい、メアリーおいで。はいよ。はいよ。ほらほらほら。」
子ども:
「来た来た来た来た!」
飼育員 南條幸夫さん:
「(鼻を上げるのは)『なーに?』っていう表現だよ。」
子ども:
「呼びましたよ!」
飼育員 南條幸夫さん:
「呼ばれるとああいう風に(鼻を上げて)ちゃんと分かるの。」
飼育員 南條幸夫さん:
「お尻の張りもなくなって来てますし、顔のくぼみも大きくなってきているので、やはり若い頃とは全然違ってきていますので。私もスタートしたころはこんなに髪の毛も白くなかったし、いっぱいありましたけど。もうどんどん、メアリーと共に年を重ねてきたので」
ゾウ舎では清掃が行われていました。
記者:
「これは誰のフンですか?」
飼育員 南條幸夫さん:
「これはメアリーです。ちょっと最近、年齢とともに消化力がだんだん弱ってきているのだと思うんですけど、フンが大きかったり小さかったりするので、注意深く見ています。」
南條幸夫さんは、60歳のベテラン飼育員。ゾウやキリンを担当する「アフリカ班」の班長です。
飼育員 南條幸夫さん(60)
班は6人。清掃、餌やり、健康管理、さらには繁殖の研究、イベント開催。業務は多岐にわたります。
南條さんが飼育員になったのは、メアリーが八木山に来て2年後の1985年、22歳の時。
翌年、ゾウの担当になりました。
南條幸夫さん:
「いや、私はトリをやりたかったんです。『お前体がでっかいな』というので当時の主幹がですね。『ゾウやったらいいんじゃないか」みたいな感じで。メアリーはその頃は本当に動きも鋭かったですし、美人さんというか、きりっとしたゾウでしたね。」
南條幸夫さん:
「メアリーバック、メアリーバック、メアリーバック、メアリーバック。」「メアリー右。メアリー足。メアリー反対の足」
高い知能を持つアフリカゾウ。南條さんは37年間のゾウの飼育でメアリーたちと信頼関係を築いてきました。後輩の飼育員にとって目指すべき存在です。
飼育員 松村亜裕子さん:
「知識の宝庫というか、経験の宝庫なので何かあったらとりあえず話を聞いて」
飼育員 廣石光来さん:
「観察眼のある人だなと思いますね。自分が気づけないところを、ものすごくたくさん見ている方だなと」
この日、イベントが行われました。
南條幸夫さん:
「常日頃、動物園にいらして頂いて、『メアリー』とお声がけして頂きまして誠にありがとうございます。」
今年9月、大勢の人たちがメアリーの来園39年を祝いました。56歳のメアリー。南條さん、常に気にしていることがありました。
南條幸夫さん:
「足が時々関節が曲がらなくなったりしています。ストレートに真後ろに足を蹴りださないで、少し斜めに蹴りだしたりしてます」
9年前の11月25日、この足の関節が原因で、最大の危機が訪れました。
南條幸夫さん:
「立ち上がろうとしても立ち上がれない。足が自由にいうことを聞かない。現状を見て、これは難しいだろうな。でも、やれるだけのことはやらなくちゃな、というのが正直なその時の感想でした」
通常、ゾウは1、2時間程度で起き上がります。長時間、横たわったままだと、自らの重さで肺がつぶれ死に至るおそれがあるのです。作業は難航…
南條幸夫さん:
「メアリーの意識がはっきりとしてるんですね。これはチャンスがあるなと」
メアリーの体重はおよそ4トン。午前8時ごろから始まった作業は午後にまで及びました。そしてついに…。起き上がれなかった時間は6時間以上。
それにもかかわらず、9年後の今も元気な姿を見せてくれているのです。
南條幸夫さん:
「4トンを超すゾウで獣舎で倒れて、こんなに長生きしたゾウはいないだろうなと。ある意味、本当に奇跡的なゾウだな