https://news.yahoo.co.jp/articles/4c404cfb0df742c1766e2591da15c79f651bb291

史上最悪の罵り合いも、醜悪な大統領選を生み出す米国の恐るべき政治システム

2024年に実施される米大統領選では、80歳のバイデン大統領と76歳のトランプ前大統領の戦いになる可能性も十分にある。
 米国社会を様々な形で引き裂いている分断・分裂を背景に、両者で討論会ではこれまで以上の罵詈雑言が飛び交う恐れも。
 米国の政党政治はある意味で緩く、行政や司法も政党化しているため、すべてをかけた熾烈な戦いになりやすい

 これまでにない醜悪な非難の応酬になるかもしれない。来年に行われることになるかもしれない、80歳の現大統領と起訴された76歳の前大統領のテレビ討論会のことだ。

 2024年に向けた民主党、共和党のそれぞれの大統領候補レースについては、バイデン氏とトランプ氏が、他の候補者を圧倒している。

 バイデン氏の健康問題やトランプ氏の起訴などの不安定要因も大きく、今後の展開について確定的なことは言えないが、現時点での世論調査を見る限り、現前大統領の再対決はあり得るストーリーだ。

 2020年のテレビ討論以上に、非難の応酬となる討論を目にする可能性がある。

 このような異常事態について知るためには、米国社会の分断に加えて、個人主義的な分裂を生みやすい政党制度について知ることが重要である。

 米国社会は建国時から、白人と黒人奴隷という深刻な差別・分断を抱えていた。

 また、白人の中でも、アイルランドやイタリアなどのカトリック系白人は低い社会的経済的地位にとどまるなど分断があった。そもそも自由主義経済、競争を重視する社会であるので、富裕層と貧困層が分かれる社会構造であった。

 しかし、21世紀に入ってから、違った意味で分断が深刻化している。

 米国社会の分断が新たに進んでいる背景には、以下の3点があると考える。

■ 米国社会の分断を加速させた人権意識の高まりと反発

 第一に、人権意識の広がりとそれに対する反発である。

 20世紀の世界では、同性婚を法制度として認めている国はなかった。しかし、21世紀に入り、オランダで認めらたことを皮切りに、米国でも2013年に連邦最高裁判決で同性婚が容認されることになった(その後2022年に法制化された)。

 日本人の視点からすると、米国はダイバーシティの先進国と見えることが多い。確かに、移民国家であるため他人種・他民族に対して相対的に寛容であるとは言える。

 しかし、米国にはキリスト教の福音派の信者が多い。福音派の信者はキリスト教の教義に反するとも解し得る同性婚には否定的である。福音派の信者数は、一説によると1億人に近いとも言われ、米国では政治的な動向を左右する。

 トランプ前大統領の共和党内での数少ないライバルであるデサンティス・フロリダ州知事は、州内でのLGBTQに関する学校教育に対して新たに規制を加えようとしている。LGBTQに関する揺り戻しがある数少ない国であるのだ。

 かつては遡上にあがらなかったテーマが人権意識の高まりで議論が俎上に載せられることになり、宗教心や信仰などの観点から容認できない人々の反発が高まっているのだ。

 第二に、苦境にある白人労働者層の反発である。