アドルフ・ヒトラーにユダヤ人の血が混じっているとしても、それは何ら驚くことではない。 なぜならば、ナチスの幹部の中にはユダヤ人の血筋を引く者が実際に複数いたからである。
ボルマン、ヒムラー、ハイドリヒ、ローゼンベルク、などである。 彼らはユダヤ人の血筋を引きながら、厚かましくも反ユダヤ主義を唱えていた。 ナチス親衛隊長官ヒムラーの右腕として活躍したラインハルト・ハイドリヒ
イギリスの伝記作家チャールズ・ワイトンによれば、ハイドリヒは比類無く冷酷で恐ろしい人物であったという。 彼は1942年にプラハでチェコ人によって暗殺された。
彼の後継者となったアイヒマンをして「ゲシュタポの中でハイドリヒ以上の冷血犬はいなかった」と言わしめた程であった。 とは言え、ハイドリヒにも泣き所があった。 ナチスの高官たちの間では「ハイドリヒの祖母はユダヤ人だ」と噂されていたのである。
のちに、ナチスが「ハイドリヒの身元を調べたら、彼はアーリア(ゲルマン)系と証明された」と発表したが、それによって完全に疑いが晴れた訳ではなかった。 その後、ハイドリヒはライプツィヒを訪れた折に、噂の根拠となった祖母サラ・ハイドリヒの墓を引っくり返して跡形もなく破壊してしまった。
戦後の調査によれば、サラ・ハイドリヒがユダヤ系であったことはほぼ確実とされている。 ハイドリヒがユダヤ人迫害に異常な熱意を示したのは、ユダヤ人迫害に異常な熱意を示すことで「後ろめたい自分の素性」を帳消しにしようとしたのだという見方がなされている