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「楽しくないのに、なんでやらないといけないんだろう」伊藤大海が明かしたWBC後の“燃え尽き症候群”…折れかけた心を支えた元チームメートの言葉〈復活秘話〉

シーズン開幕直後の4月、マウンドに立つ日本ハム・伊藤大海の姿は1カ月前と明らかに違った。雄叫びを挙げながら、打者をねじ伏せる。気迫あふれるピッチングが持ち味の右腕から、魂が抜け、抜け殻のようになっていた
 ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)優勝の“陰の立役者”に、いったい何があったのか――。伊藤は、小学2年で野球を始めてから初めて味わう感情に襲われていたことを明かした。

「初めて野球したくないって一瞬、思いました。今までそんなことなかったんですけど…。何でやっているんだろうみたいな…。楽しくないのに、なんでやらないといけないんだろう。お金もらってやっているのに…難しかったですね」

 侍ジャパンが3大会ぶりの世界一に輝いたWBC。ファイターズOBの大谷翔平(エンゼルス)、ダルビッシュ有(パドレス)の活躍が大きくクローズアップされる中、チームから唯一の選出となった伊藤は存在感を示した。本職は先発だが、金メダル獲得に貢献した2021年の東京五輪に続き、WBCでも中継ぎとしてブルペンを支えた。

 準々決勝のイタリア戦では先発した大谷翔平の作ったピンチで“火消し”に成功。ローンデポ・パークで行われたアメリカとの決勝戦では、豪華投手リレーの一員として堂々のピッチングを披露した。3試合に登板して、計2回1/3を無失点。代名詞でもあるロジンバッグの粉を舞わせて、大舞台で大きなインパクトを残した。

「散々でした…睡眠欲も食欲もない」
 栄光から一転、アメリカから帰国した伊藤を待っていたのは眠れない日々だった。ベッドで横になり、目を閉じてもなかなか寝付けない。気力を失い、“燃え尽き症候群”のような状態に陥った。当時の心境を苦笑いしながら振り返る。

「あの(WBCの)舞台で燃え尽きることができないなら、優勝できていないんですけどね。帰ってきてからは気持ちが全然、乗らなかったです。私生活も散々でした。欲がないから、睡眠欲も食欲もない。“無”でしたね。あそこまで感情がなくなって、まさに“無”になったというのは今までありませんでした」