滋賀県彦根市などは28日、弥生時代末期から古墳時代初めの大規模集落遺跡「稲部遺跡」(稲部町)で2019年に出土した漆塗りの帯状の繊維製品の断片について、箱状の矢入れ具「靫(ゆき)」の横帯と判明したと発表した。3世紀の古墳時代初頭のものとみられるとし、市は「国内最古級の資料。靫の製作や使用が始まる様子、古墳時代初頭の紡織技術を考える上で極めて重要だ」としている。
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 靫は上位の首長の威厳を示す希少品。市文化財課によると、繊維製品の断片は12点あり、同遺跡の居住域の端に掘られた溝から発見された。矢筒部に巻かれた横帯2本(各6点)で、1本は長さ18・7センチ、幅4・5センチ。もう1本を構成するとみられる断片には、背負うためのひも通しがあった。漆が塗られていたため、腐らずに原形の一部をとどめた。

絹糸と植物繊維が使われ、大部分は中国・三国時代に用いられた「綾織(あやお)り」で編まれ、福井県鼓山(つづみやま)古墳で出土した古墳時代前期ごろの靫の繊維と織り方が似ているという。一緒に出土した土器の特徴や、放射性炭素年代測定の結果などから、西暦240年ごろのものと推定している。