行政の検証逃れ 県庁守って人災防げず【再生 道半ば 熱海土石流2年㊦】

 ちょうど1年前、熱海市の伊豆山小で行われた土石流災害の追悼式。28人の犠牲者の名前が読み上げられた後、川勝平太知事は参列した遺族を前に意気揚々と誓った。

 「いたましい災害が二度と起こらないように、県を挙げて命を守る安全な地域づくりを推進していく」

 ところが、トップの発言と裏腹に県の組織で、再発防止に必要な行政対応検証を避ける「検証逃れ」が繰り返されていたことがこの1年に明らかになった。

 業者の悪質な開発行為に厳しい規制が可能な砂防法を適用しなかったことに関しては、行政対応検証委員会(第三者委員会)に関連情報が提供されず、ほとんど検証されなかったことが発覚。批判を受けた県は昨年7月末、「内部検証」と称した当事者の見解を発表。専門家が首をかしげるような論法で法的問題がないと結論付け「検証された」と主張し始めた。

 重要情報を掲載した過去の行政文書は「見落とした」と検証委に提出せず、本紙の指摘で今年2月に追加開示した際には、検証委の委員の意向を確認しないまま、未検証でも問題がないかのように「検証委の検証結果に影響を与える内容のものではない」と発表した。その後、この開示文書は白黒化されて読み取れない状態に加工されていたことが分かった。

 なぜ、情報の出し渋りや検証逃れが起きるのか。複数の県関係者が「法務課が関与している」と口をそろえる。「情報を出そうとしたら止められた」「(行政文書の)必要ないと考えた箇所を黒塗りにさせられた」と明かし、文書の情報を非開示にするかどうかの事実上の決定権は、文書の作成元ではなく法務課や県幹部にあったと言う。

 法務課は行政文書の開示と訴訟対応の双方を担い、遺族や被災者から損害賠償請求を起こされた熱海土石流も例外ではない。不鮮明文書の問題を巡っては、作業した同課職員の聴取結果を基に「白黒コピーした結果」とされているが、記者が同課のコピー機を使って職員立ち会いの下、白黒コピーをしたところ、再現できなかった。聴取した“証言”との整合性が取れないとただすと、森隆史法務課長は「職員はうそをつかない」と語気を強めて反論した。

 被災者らが「二度と起こらないように」と望んだ盛り土災害は熱海土石流からわずか1年2カ月後、県内各地で再発。浜松市ではけが人も出た。今年4月によ...

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