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●研究者を「使い捨て」にする国
 この6月、理化学研究所から雇い止めに遭った30代男性が、中国に渡り大学教授となった。海外への「頭脳流出」だった。

もともと、理研に長くいるつもりはなかった。それでも、胸のつっかえはとれない。

 「不当に雇い止めをされて、理研にはもう、未練はなくなりました」

 男性は東大大学院に在学中から成果を出し、総長賞も受賞した。2013年春に理研に採用後も順調に実績をあげ、内外の賞をいくつも受賞した。

理研との契約は1年更新だった。6年目を迎えた18年ごろには、自分の研究室を持ちたいと大学への転職を考え始めていた。

 そのとき、上司から「ユニットリーダーにならないか」と話を持ちかけられた。

 ユニットリーダーになれば、研究室を主宰できるという。と同時に、若手研究者を支援する国の「卓越研究員」にも応募するよう言われた。

いずれも採用は18年10月付だが、任期は7年とあった。しかし理研はその2年前に就業規程を変え、通算10年を超える契約は更新しないとした。
この規程に基づけば、男性は4年半後の23年3月末には雇い止めとなるはずだった。

4年半では、まともに研究できない。それに任期前の雇い止めは問題となるのではないか。

 上司に疑問をぶつけると、「採用時は(23年3月までの)4年半の契約だが、25年3月までは心配しなくてよい」と言われたことを覚えている。

朝日新聞(一部有料)2023/7/4 13:00
https://www.asahi.com/articles/ASR6X61BVR6FPLBJ004.html