女の性(しよう)は皆ひがめり。人我(にんが)の相(さう)深く、貪欲(とんよく)甚だしく、物の理(ことわり)を知らず、ただ迷ひの方(かた)に心もはやく移り、詞(ことば)もたくみに、苦しからぬことをも問ふ時はいはず、用意あるかと見れば、またあさましきことまで問はずがたりにいひ出(い)だす。深くたばかりかざれることは、男の智慧にもまさりたるかと思へば、そのこと跡より現るるを知らず。すなほならずして、つたなきものは女なり。(第一〇七段)

(女の本性はみなねじけている。我執(がしゆう)が深く、欲張ることはなはだしく、ものの道理を知らず、ただ、迷いのほうに心がすぐに移り、言葉も巧(たく)みで、いって差し支(つか)えのないことでも、こちらが問う時にはいわず、たしなみがあるのかと思うと、またあきれはてるようなことまで、尋ねもしないのに語りだす。深く考えをめぐらして表面を飾っていることは、男の知恵よりも優っているかと思うと、その取り繕(つくろ)いが、あとからばれてしまうことはわかっていない。素直でなくつまらないものは女である)

https://mag.nhk-book.co.jp/article/6700