外来種に侵食される鳥取砂丘がSOS 除草作戦へ3千人出動めざす

緑が一切ない砂漠のイメージが強い国立公園「鳥取砂丘」(鳥取市)だが、実はいたるところに
「草原」が広がる。外来種の雑草などによる草原化で、砂丘本来の景観を取り戻そうと
市民や観光客らの人力によるボランティア除草を再び活発化させた。

・半分近くが草原化
「県民の財産である鳥取砂丘の景観を守り、次世代に引き継いでいくための取り組み」
平成16年度に始まり、19年の歴史を有するボランティア除草の目的を、鳥取砂丘レンジャーの
玉野俊雅さんは、そう説明する。

その精神は、21年に施行された「日本一の鳥取砂丘を守り育てる条例」にも盛り込まれた。
県緑豊かな自然課によると、主に外来種の雑草が繁茂する草原化が顕著になったのは
昭和40年代初めごろという。

平成3年には草原化した面積が、国の天然記念物指定を受けている鳥取砂丘のメインエリア
約145ヘクタールの42%まで拡大。馬の背と呼ばれる高台の下辺りも緑一色となった。

鳥取砂丘の歴史を振り返ると、日本海からの冬の季節風に起因する「飛砂(ひさ)」が周辺の
住民を苦しめてきた。江戸時代から飛砂を防ぐための植林が行われたものの、戦前までは、
旧陸軍が砂丘を演習地として活用したため環境が大きく変わることはなかった。

ところが、植林された樹木が成長するにつれ、風がさえぎられて砂が動かなくなり、いたるところに
雑草が繁茂。砂丘本来の景観が損なわれて観光面への影響も懸念されるようになった。

このため、民間から砂防林の除去運動が起こり、鳥取市は昭和40年代に3年、50年代にも
2年かけて計約32ヘクタールの砂防林を伐採し、ようやく砂の動きが確認できるようになった。
しかし、皮肉なことに、これが草原化に拍車をかけることになった。

「外来種の侵入を食い止めることができず、伐採したことで種が飛んで逆に草原化が広がった」
と玉野さん。鳥取砂丘に占める緑地の割合は昭和42年の24%から、54年39%、
平成3年42%と拡大し続けた。

このため県や同市などは、平成3年から3年間かけて除草と砂の動きの関係などについて調査。
その結果、除草が砂の動きを活発にすることが裏付けられ、同時に、外来種の繁殖力は強く、
継続的な除草が必要なことが分かった。

鳥取砂丘では、除草を推進する一方で、江戸時代から取り組まれている飛砂防止対策も
継続している。玉野さんは「双方の施策を同時に進めるのは矛盾しているという指摘があるが、
植えなければならない木があれば、抜かなければならない草もある。

生活を守り、同時に砂丘も守っていく」と話し、バランスをとりながら砂丘を保全していく考えを示した。
https://news.livedoor.com/article/detail/24576263/