https://news.yahoo.co.jp/byline/obiekt/20230709-00357102
ロシア軍のUMPK滑空誘導爆弾によるスタンドオフ攻撃と対抗策
ロシア軍が今年4月頃から多用し始めた戦法として、戦闘機からの滑空誘導爆弾の使用があります。ロシア軍が新たに開発した
滑空誘導爆弾「UMPK(УМПК)」を戦闘機に搭載し、ウクライナ軍の主要な長距離地対空ミサイルの射程外から攻撃するというスタンドオフ攻撃です。
ロシア軍のUMPKは通常の航空爆弾に後付けで装着する滑空誘導爆弾キットです。アメリカ軍のJDAM-ERと全く同じ発想の兵器になります。詳細は判明していませんが、おそらくGNSS(GPS、グロナス、北斗など)のグロナスによる誘導方式です。
UMPK滑空誘導爆弾の射程は類似品のJDAM-ERやJSOWなどからの推定になりますが、高空(高度7500m)から投下した場合は射程80~100km、低空(高度150m)から投下した場合は射程20km前後になるでしょう。
80~100kmならば限定的な条件ですが敵側にこれより長い射程の迎撃ミサイルが無ければ、
発射母機が安全圏から攻撃できるスタンドオフ攻撃が実施可能です。また低空投下であっても、レーダーに見付からないように低空突撃から一時的な上昇中に投下するトス爆撃という方法で、
敵防空網を掻い潜ることが可能になります。
巡航ミサイルが2000km以上の射程を持つのに比べると滑空誘導爆弾の射程は80~100kmと短いのですが、高価なターボファンジェットエンジンを積んでいないので製造コストが大幅に安くなります。
製造コストが安いのはプロペラ推進のプログラム飛行型自爆ドローン(シャヘド136/131)もそうですが、こちらは機体が小さく射程が巡航ミサイル並みに長くても弾頭重量が数十kg程度と少ないので威力に劣ります。
滑空誘導爆弾はGNSS(GPSやグロナス、北斗など)系の誘導兵器の中でも「威力が高く製造コストが安いが射程はさほど長くない」という立ち位置の兵器です。
なおUMPKの前身であるMPKは安価なパルスジェットエンジンを搭載して射程100km以上を狙う計画もありましたが。UMPKではまだ確認されていません。