トランス女性の経産省職員が逆転勝訴、最高裁が職場のトイレ使用制限は不当だと判断
最高裁判所第三小法廷の今崎幸彦裁判長は「職員は、自認する性別と異なる男性用トイレを使うか、職場から離れた女性用トイレを使わざるを得ず、日常的に相応の不利益を受けている」と指摘しました。
そのうえで、職員が離れた階の女性用トイレを使っていてもトラブルが生じていないことなど今回のケースの個別の事情を踏まえ、「人事院の判断はほかの職員への配慮を過度に重視し、
職員の不利益を軽視したもので著しく妥当性を欠いている」としてトイレの使用制限を認めた人事院の対応は違法と判断しました。5人の裁判官全員一致の結論でした。
また、裁判官5人全員が個別に補足意見をつけ(異例なことです)、今崎裁判長は「施設管理者、人事担当者らがトランスジェンダーの人々の立場に配慮し、
真摯に調整を尽くすべき責務が浮き彫りになった」と付言しました。
https://www.outjapan.co.jp/pride_japan/news/2023/07/15.html
【宇賀克也裁判官の補足意見】
職員が戸籍上はなお男性であることをどう評価するかが問題になる。現行法では、戸籍上の性別変更には性別適合手術を行う必要がある。
生命、健康への危険を伴い、経済的負担も大きく、体質などで受けられない者もいるので、手術を受けていない場合でも可能な限り性自認を尊重する対応を取るべきだ。
経産省は早期に研修を実施し、制限を見直すことも可能だったと思われるのに、手術の督促を反復するのみで約5年が経過している。
多様性を尊重する共生社会の実現に向け、職場環境を改善する取り組みが十分になされてきたとはいえない。