「富士山登山鉄道」構想、山梨県が初の予算化 「過剰観光」に対策
(上から時計回りに)富士スバルライン=山梨県富士河口湖町▷富士山登山鉄道のイメージ▷登山鉄道のイメージイラスト(県提供)
今月開山した富士山登山をめぐって、山梨県が次世代型路面電車(LRT)による「富士山登山鉄道」構想の事業化を検討する予算を決定した。
世界文化遺産の登録から10年、新型コロナウイルス感染症の5類移行から初めての登山シーズンとあって、
山梨側の登山道は過去10年間で2番目の登山者数を記録。富士登山の上質化による高付加価値の観光振興の推進と、
積年の課題であるオーバーツーリズム(過剰観光)対策などを具体的に解決しようとの試みだ。ただ、構想には課題や反対の声が多く、新たな論議を呼びそうだ。
有料道路にLRT
「今季の富士山は、国内外から多くの来訪が予想され、以前にも増してオーバーツーリズムや自然環境への負荷が懸念される。
登山者数の適正化を図っているが、富士山の普遍的な価値を保全しながら、その価値を高め、未来に引き継ぐことが責務だ」
6月20日、山梨県の6月定例議会。長崎幸太郎知事は冒頭、こう説明し、その「具体的解決策」として「富士山登山鉄道構想」にとって初めてとなる予算案計上の意義を強調した。
構想の事業化検討費は、具体化に向けた官民の役割や整備手法の検討のため6200万円を計上。6月議会で可決、承認された。
構想は長崎氏が平成31年、初めての知事選で掲げた公約の1つ。県が管理する河口湖から富士山5合目までの有料自動車道「スバルライン」を、
軌道に切り替え、LRTでつなぐ。総延長は約25〜28キロ。
厳冬期対策と景観の両面から、架電ではなく、地中に配線した電力線から非接触で給電する方式が軸だ。
このため、一般的な鉄道軌道とは異なり、救急車といった緊急車両などは走行できる。整備費は約1400億円と見積もっている。
これにより、バスやタクシーを含め自動車による五合目までのアクセスは廃止され、鉄道に一本化される。
またLRTの運賃を往復1万円に設定することで登山者数の適正化を図る。
https://www.sankei.com/article/20230716-U262BDL5H5LCZKK3TKIDL2RLLA/