日本や中国が人口減少に悩む中、人口が急増しているのがアフリカだ。西部ニジェールは合計特殊出生率が6・82と世界最高で、女性1人が生涯に7人近い子供を産む。人口はこの20年間で倍増して約2600万人になった。多くの国民は子宝を発展と繁栄の象徴として歓迎するものの、厳しい現実にも直面している。

 首都ニアメーは大通りから一歩入ると未舗装の道路が目立つ。5月上旬、近所でも評判の子だくさん家族がいると聞き、粗末な日干しれんがの家が並ぶ地区を訪れた。父親のアマドゥ・マヌさんは自分でも正確な年齢が分からないが70歳くらい。50年以上前に最初の結婚をし、4人の妻がいる。「イブラヒム、ムクタール、アブバカル、ムスタファ、アブイシャ、メイラマ、ファトマ……。子供は26人だ」

 ところが親族を交えて詳しく確認すると、実際には29人だった。病気などで亡くなった子も別に10人いて、合計で39人。半年前にも1人生まれたばかりという。

 ニジェールでは国民の大半がイスラム教を信仰し、マヌさんも敬虔(けいけん)な信者だ。「イスラム教徒の数が増えることは良いことだ」と信じる。運転手を退職した後は無職で、生活は楽ではないが「食べ物は神様が与えてくださるものだ。子供を養う心配はしたことがない」と意に介さない。

 子だくさんを望むのは貧困層にとどまらない。「15人はほしい」と話すのはアブドゥルアジズ・イデさん(43)。経営する中古車輸入販売業がここ数年好調だという。今は妻1人子供4人だが、第2、3の妻を迎え入れることを真剣に考えている。「子供は神からの祝福で、多くいれば誰かが亡くなっても持続可能な家庭を築ける。自分には責任を持って育てられるお金と体力がある」

 ニジェールの人口増加率は年間約3・7%で、人口の半分が15歳未満の子供だ。女性の8割は18歳未満で結婚する。人々に話を聞くと「人口は発展の資本」「国土は広大(日本の3・3倍)だから人が増える余地がある」「天然資源が豊富だから大丈夫」と楽観的な答えが多い。

 一方で女性の間には時代と共に意識や行動に変化も出ている。コミュニケーション・コンサルタントのアダマ・…


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