ーー外務省の「令和4年度 国際機関等への拠出金等に対する評価」には、「日本は(中略)IAEA設立以来一貫して指定理事国を務めており、IAEAの予算や政策策定、重要課題への対応及び一連の活動実施で積極的に関与し、日本の意向を反映できる地位にある」と記載されています。
日本は理事国ですので、予算の政策決定など理事国としての活動もあります。つまり、IAEAの活動に貢献するという意味合いです。
「日本の意見を反映できる。だから、IAEAが処理水放出を認めた」という解釈ではありません。
IAEAの理事国は、日本だけではありません。理事会は35か国で構成されています。処理水の放出に反対している中国も、理事国の一つです。
一つの国だけが意見を主張しても、他の国が納得しなければ成立しません。日本の意向を反映できるという意味は、理事国にいることによって、IAEAの活動に貢献しているということです。
ーー記事は最後に「国際貢献で支出が必要だとしても、資金提供する組織に評価を求めれば、『配慮』が働く恐れがある。お墨付きをもらう相手を間違えていまいか」というデスクメモで締めくくられていました。
批判的な立場から見るとそう見えるのかもしれませんが、IAEAのような専門機関はあくまでも科学的根拠に基づいて行動しています。
例えば、イランの核問題もありましたが、IAEAはもちろん中立的な立場から科学的根拠に基づいて理事会に報告しています。
世界中で原子力が適切に平和利用されているかどうか査察を行っていますし、今回の処理水についても、IAEAが持つ科学的な知見から結論を出しています。
話は変わりますが、コロナの時にアメリカのトランプ大統領(当時)が、世界保健機関(WHO)が「中国に配慮している」と批判したことがありましたよね。
しかしアメリカは、中国より多くの分担金を支出していました。WHOは一定の制約がある中で国際機関としての任務を果たそうとやってきたわけで、アメリカや中国の言いなりになったわけではありません。
国際機関が配慮や忖度をすることで中立性を失うと国連憲章に違反しますし、国際機関としての存在意義を失います。
IAEAの理事会で議論する時も、基本的に各国の同意を求めることになり、分担率の高い国の主張が必ず通るわけではありません。
https://www.huffingtonpost.jp/entry/tokyo-iaea_jp_64ae0c6be4b02fb0e6fbbfd8