国際水星探査計画「ベピコロンボ(BepiColombo)」は、2021年に初めて水星スイングバイ観測を行ないました。そのときのデータから、水星のX線オーロラを生み出す要因となる電子を直接観測していたとわかりました。
ベピコロンボは、2018年10月に打ち上げられた欧州宇宙機関(ESA)と宇宙航空研究開発機構(JAXA)の共同ミッションです。現在は2025年の水星周回軌道への投入に向けて、天体の重力を利用して軌道を変える航法のスイングバイを繰り返しながら航行しています。
同機は初の水星スイングバイ観測を2021年10月1日に実施。その際に収集されたデータが分析され、研究成果が科学ジャーナル『Nature Communications』に掲載されました。
オーロラは、地球以外の惑星でも観測される現象です。水星のオーロラは2012年に、NASAの探査機「メッセンジャー」が初観測しています。
地球のオーロラは太陽からの荷電粒子が高層大気と衝突することで起こりますが、 水星の大気は地球よりもずっと希薄。そのため荷電粒子は水星の大気と衝突せず、岩だらけの地表にまで到達して、表面の物質と衝突して蛍光X線を出すと予測されてきました。
X線で発光することから、水星のオーロラは「X線オーロラ」と呼ばれています。
ベピコロンボは2機の周回探査機で構成されています。惑星の表層と内部構造をスキャンするESAの水星表面探査機(MPO)と、磁気圏を研究するJAXAの水星磁気圏探査機(みお)です。
水星の周回軌道に到達するまでの2年間、2機は連結された状態で航行を続けます。
第1回水星スイングバイ時のベピコロンボは、水星の地表から最接近高度120マイル(200km)の距離を通過。みおに搭載されているプラズマ観測装置が、電子が水星表面へと降り込む様子を直接観測しました。
太陽から放出された電子は水星の磁気圏尾部で加速され、水星へと輸送されたようでした。
磁気圏とは、その天体の固有磁場に支配される惑星の周りの領域のこと。荷電粒子が地表に降り込み、水星表面の物質と衝突。X線で発光する現象、つまりオーロラを引き起こすと示唆されます。
https://www.gizmodo.jp/2023/07/x-ray-aurora-of-mercury.html