藤浪晋太郎投手(29)が電撃トレードでアスレチックスからオリオールズに移籍したが、オリオールズといえば「ノーコン再生工場」で知られる。コントロール難の投手を次々と矯正し、生まれ変わらせてきた実績がある。

【写真】力投するオリオールズ藤浪晋太郎

 リーグ屈指の守護神にまで成長した右腕フェリックス・バティスタ(28)もその1人。身長203センチの巨体から100マイル(約161キロ)の剛速球を繰り出すダイナミックな投手だが、制球難に苦しみ2年前の開幕時はまだ1Aにおり、マイナーでは1・78イニングに1度の割合で四球を出していた。それがメジャーに昇格した昨季以降は約2・74イニングに1度の割合と、安定感が増した。

 救援左腕シオネル・ペレス(27)は、他球団でプレーしていた2021年までは制球難で四球が多かったが、昨季からオリオールズに移籍すると与四球率を約半分に減らした。昨季途中にツインズからトレードで移籍してきた救援右腕イエニエル・カノ(29)は、移籍前の与四球率が16・5%だったが、移籍後は3・4%と大幅減に成功している。

 投手を再生させるキーマンは、クリス・ホルト投手コーチ(46)だ。現役時代はパイレーツ傘下でプレーしたが1A止まりで1年で契約を解除され現役を引退したが、アストロズ傘下のチームでコーチとして実績を積み、現オリオールズのマイク・エライアスGMに買われてオリオールズに移籍した。

 プロ経験が乏しく球団とのコネもないホルト・コーチがMLBの球団に入ることになったきっかけは、2012年12月に参加した「最高クラスの投手コーチブートキャンプ」という訓練講座だったという。それには当時メジャー1年目でダイヤモンドバックスに所属していたトレバー・バウアー投手(現DeNA)という異色の参加者もいたそうだが、プロのコーチも何人かおり、ホルト・コーチの光る才能が見いだされた。エライアスGMは同コーチを「データ分析に非常に優れ、プロの投手に何が必要かも分かっている。その両方を兼ね備えた指導者は非常に少ない」と信頼を置いている。さらにコミュニケーション能力も高く、コーチ能力も高いと投手からも評価が高い。

 そんな同コーチの制球力矯正法は「投手によってケース・バイ・ケースだが、基本はまずフォームに修正できる部分があるか、次に球種ごとに投げるときのターゲットを決める、3つ目がストライクゾーンを攻めてバットを振らせる」だという。藤浪はアスレチックスの最後の頃には安定感が増してきていたが、新天地でさらなる飛躍も期待できるかもしれない。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「水次祥子のMLBなう」)

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