Rapidus(ラピダス)は2022年8月に、経済産業省の音頭のもとで日本の主要企業8社が出資する形で設立された半導体開発生産企業で、2020年代後半にビヨンド2ナノの超最先端ロジック半導体を作ろうと企図している。しかも、少量多品種生産を目指すという。

 これを見て筆者は、「ファーストガンダム」の物語における地球連邦軍のV作戦を思い浮かべた。ガンダムの世界では、地球連邦軍が国力が30分の1のジオン公国に戦争を仕掛けられ、戦争序盤であっけなく敗退しまくるわけだが、ジオンの強さは、新型兵器であるモビルスーツのザクにあった。

 これは、もともと月面作業用の有人ロボットを兵器に転用したもので、基本は量産型であり、モビルスーツの数にものを言わせてスペースコロニーを地球に落とすなどの荒っぽい戦いを行い、地球の都市の多くもジオンの支配下に置かれた。

 それに反抗すべく、地球連邦軍はサイド7というスペースコロニーでV作戦という新型モビルスーツ開発を極秘裏に行う。その試作機がファーストガンダムの主役、ガンダム、ガンキャノン、ガンタンクだ。

 テレビアニメでは毎週のようにガンダムが活躍して、ジオンのザクよりも圧倒的に高性能なガンダムが、主人公のアムロ・レイという素人同然のパイロットの操縦にも関わらず、毎週のようにがんがんザクを倒していく展開となっている。そう、ガンダムはとてつもなく製品差異化がされたモビルスーツで、そのことはランバ・ラル大尉と戦った際に、「そのモビルスーツの性能のおかげだということを忘れるな」とアムロが釘を刺されるほどであった。

ジオン軍のザクには初期型のザクⅠ(いわゆる旧ザク)を改良した量産型のザクⅡが、物語の全般にわたって大量に投入される。また、陸専用にザクⅡベースで開発されたグフも登場する。このあたりまでは、ジオン軍は地球連邦軍に対して優勢にことを運んでいた。

 しかし、その後どうなったというと、ドム、ゴッグ、ズゴック、ゾック、ゲルググ、ギャンなど、毎週の放送で1機は新型のモビルスーツが登場するという、連邦軍と同じような製品差異化戦略を採り始める。このあたりからジオン軍は劣勢に陥る。

 多品種のモビルスーツ、モビルアーマーを開発するものの、数が足りない。本来ならガルマ・ザビの弔い合戦を命じられたランバ・ラルのところにはグフに続けて新型モビルスーツのドムが送られてくるはずだったが、マ・クベに邪魔をされて、マ・クベ配下にドムが与えられてしまう。このあたりからジオン軍は、機体は強いものの数が足りないという状況が始まる。

地球連邦軍の反転攻勢で
忘れてはいけない「ジム」の貢献度
 一方で、地球連邦軍の本部ジャブローでは、ガンダムのローコスト量産バージョンであるジムの大量生産に入る。このジムが設定上初めてガンダムのストーリーに登場するのは、ジオンが初めて大きく敗退したオデッサ・デイであり、その後のジャブロー襲撃戦も、モビルスーツの種類は多いものの物量が足りずに、連邦軍の基地を落とすことはできなかった。

 そこから連邦軍の反撃が始まる。ソロモンの攻略、終戦を迎えるア・バオア・クーの戦いでは、ジムとボールという自分が連邦の兵士なら絶対に乗りたくないような簡易的なモビルスーツを大量投入した連邦軍が、ついにジオンを打ち負かしてしまう。

 このときもガンダムは活躍はしているものの、局地戦での戦いであり、宇宙侵攻にあたっては連邦軍上層部から「おとり部隊」扱いまでされている。つまり、アニメの作り手としてはガンダム中心に物語は進んでいるのだが、連邦軍の勝利はジムとボールという量産型モビルスーツの活躍によるところが大きい。

再び、現実の世界に戻ろう。ガンダムがフィクションであるところの一つに、モビルスーツ開発で圧倒的に進んでいたジオンに対して、後発の連邦軍がV作戦でジオンを圧倒する超モビルスーツを作ってしまうということがある。これには違和感がある。

 
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