改正道路交通法が今月1日に施行され、板状の車両に立ったまま乗って運転する「電動キックボード」が自転車並みの扱いになった。運転免許は不要でヘルメットも努力義務となり、速度制限の要件を満たせば歩道も通れる。茨城県内のメーカーには予想を上回る注文が殺到。手軽な交通手段として期待される一方で、新たな交通ルールの周知などが課題となっている。
電動キックボードは、足で地面を蹴り出してからハンドルにあるアクセルレバーを手で引くと、搭載されたモーターが動いて走行する仕組み。改正前の道交法では原動機付き自転車(原付きバイク)に該当し、最高速度は30キロでヘルメットの着用義務があった。
今回の改正で、最高速度が20キロを超えず、大きさなどの要件を満たす車両は「特定小型原動機付き自転車」と規定。16歳未満の運転は禁止されているものの、16歳以上なら運転免許は要らない。車道の左側や自転車レーンを走行し、ヘルメットの着用は努力義務になった。最高速度が6キロ以下に制御できるものは、歩道や路側帯を走れる。
「ありがたいことに、生産が追いつかないほどになっています」
常総市豊岡町乙にある電動車両メーカー「KINTONE(キントーン)」の担当者は、電動キックボードの需要の高まりを実感している。
従来はレジャー施設の敷地内など公道以外で使える商品を販売してきたが、改正道交法に沿った規格の商品を新たに開発した。20キロ以下と6キロ以下の2段階で走行速度を制御でき、重さは14キロ。折りたたんで持ち運ぶこともできる。
目新しさに加えて買い求める際の気軽さを追求し、販売価格は税込み9万9800円。搭載するバッテリーを他社製品より小さくすることで価格を抑えた。
5月に予約販売を始めると、初回の60台分はすぐに完売。急きょ増産態勢をとったが、第2弾の220台、第3弾の300台もすでに売り切れた。現在は第4弾を受注生産しているが、完売間近だという。
残る課題は、新たな交通ルールの周知だ。
同社や県警は、県内の大学生らを対象に、電動キックボードの試乗会や講習会を開いている。
ポイントになるのは、車両の後部にある最高速度を知らせる「緑色のランプ」だ。ランプが点灯したままだと車両は最高速度が20キロ以下の設定で、歩道は走れない。ランプが点滅している場合は最高速度が6キロに制御されていて、歩道を走ってもいいとされる。
県警交通総務課の担当者は「運転手だけでなく歩行者にも交通ルールを理解してもらい、トラブルの未然防止に努めたい」としている。
https://www.asahi.com/sp/articles/ASR7Z7R2YR7QUJHB028.html