ドイツで右翼政党の支持率が高まる、幹部はネオナチまがいの発言

旧東ドイツ・テューリンゲン州のゾンネベルク郡は、人口約5万7000人。ドイツで最も小さな郡の1つだ。
ここで6月25日に行われた郡長(ラントラート)選挙の決選投票の結果は、同州だけではなく中央政界、そしてドイツ社会全体に強い衝撃を与えた。
この選挙は、AfDが上昇気流に乗っていることをはっきり示した。

まず6月11日に行われた選挙では、4人の候補者全員の得票率が過半数に達しなかったために、2週間後に決選投票が行われた。

 決選投票では、AfDのロベルト・ゼッセルマン候補が52.8%の票を獲得し、現職のユルゲン・ケッパー氏(キリスト教民主同盟=CDU)を下した。
ゼッセルマン氏は7月3日に郡長に就任した。ドイツの自治体で初めて、AfDに属する首長が誕生した。

 ゼッセルマン氏の勝利を防ぐために、CDUから左翼党(リンケ)まで複数の政党が一丸となって現職のケッパー氏を推したが、同氏の得票率は47.2%にとどまり、AfDに勝てなかった。
テューリンゲン州行政局は、ゼッセルマン氏に対する身上調査を7月10日に終えて、「ゼッセルマン氏はドイツの憲法への忠誠を誓っている。彼がAfD党員だという理由だけで、首長就任の資格を剥奪することはできない」と発表した。

 だがAfDは、ドイツで最も過激な主張をする政党だ。同党は難民受け入れ数の大幅削減や、ドイツがユーロ圏から脱退することを求めている他、「イスラム教はドイツに属さない」など排外主義的傾向が強い。
またAfDは米国よりもロシアに親近感を持っており、ドイツによるウクライナ支援にも批判的だ。

 このためAfDは、ドイツの捜査機関・連邦憲法擁護庁が「極右団体の疑いのある政党」と位置付けて監視している。
連邦憲法擁護庁は、「極右団体の疑いのある政党」にスパイを送り込んだり、裁判官の許可が得られれば電話やメールの盗聴をしたりすることができる。

 中でもゼッセルマン氏が属するAfDテューリンゲン州支部は、同党の中で最も過激だ。
同支部のビェルン・ヘッケ支部長は、ベルリンの中心部にあるホロコースト(ユダヤ人虐殺)追悼モニュメントについて「あのような恥ずかしい物を首都の真ん中に設置する国は、ドイツだけだ」と公言するなど、AfDに属す政治家の中でも最も過激な発言をする。
このモニュメントは、600万人の犠牲者を哀悼するものだ。

https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00023/080100382/