「僕の家には怪物が住んでいる」15年以上無職・35歳の兄だけじゃない。この家族、みんな変。僕も…変⁉
この物語は真夏に昼寝をしている主人公が見た凄惨な夢から始まる……。
『住みにごり』(たかたけし/小学館)はホラーなのだろうか。いや、それにしては笑えるポイントもある。とすればブラックなギャグ漫画なのか。ギャグなはずがない。登場人物みんなが狂っているのだから。
読めば読むほど、恐怖と笑いの入り混じった世界に翻弄され、やがて私たち読者もその不穏さに飲まれていく。序盤からしばらくは家族の日常が描かれているだけだったが、物語が進むと不穏な雰囲気は読者の不安に変わっていく。
何度も重版され、ビートたけし氏など著名人から絶賛されて宝島社による『このマンガがすごい!2023』にランクインした理由も「登場人物全員、どこかおかしいのでは?」と思わせる独創性にあるのだろう。
主人公の末吉は「会社から長期休暇をもらった」と言ってひさびさに実家に戻り、リストラされた父、車椅子生活を余儀なくされている母、よく実家に来る離婚歴のある姉、そして部屋にこもってニート生活をしている兄のフミヤと再会した。
35歳のフミヤは外見からして不気味だ。15年以上無職で、毎日ポテトチップスを食べる生活をしており、太っていてムダ毛も剃っていない。末吉はそんな兄に嫌悪感を抱いており、約20年会話をしていない。
序盤、このフミヤが家族の脅威なのかと思いきや、ページをめくるごとに「あれ? おかしいぞ」と読者は首をかしげることになる。
フミヤだけではない、それぞれの登場人物の狂気がクローズアップされていくのだ。
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