英国や米国の一部の大富豪たちが、自分たちに「富裕税」を課してほしいと主張している。もっと税金を払うことができれば、経済格差の大きい社会の安定が促される。そうなれば富豪にとってもプラスになるはずだというのが、彼らの主張だ。

2017年の夏、ジェンマ・マクガフは失業していたが、英国の上位1%の富裕層の仲間入りを果たしたところでもあった。自らが経営する企z業「Product Compliance Specialists」を売却し、大富豪になったため、二度と働かなくて済む境遇になった。

その後マクガフは、資本主義が気候に与える影響を論じたナオミ・クラインの『This Changes Everything』(邦訳『これがすべてを変える 資本主義VS.気候変動』)を読み、その内容に共鳴した。「考え方が大きく変わりました」とマクガフは言う。「ポルシェを売ってテスラを買いました。ポルシェの911なんて時代にそぐわないものは手放さなければ、と」

19年、マクガフは「Eleos Compliance」を創業し、透明性と社会や環境に配慮した企業に与えられる「B Corp認証」も取得した。彼女は新会社から給料を受け取ることにしたものの、収入の大半は投資、債券、賃貸不動産などの資産収入が占めるようになった。

すると突然、マクガフのもとに、節税のために法の抜け穴を利用する方法を指南する不穏な文書が複数の会計士から山のように届いた。そこでマクガフは給与所得に課される税率と比べて、資産売却による所得に課される税率が低いのはなぜかなのか分析した。

マクガフはふたつの結論を得た。ひとつは英国の税制は不公平だということ。もうひとつは、自分はもっと納税して社会に貢献できるはずだ、ということだった。

https://www.sankei.com/article/20230805-JS4EHXPMRFNRVEW3IUC37HI6IQ/