身近な日用品をはじめ、幅広い製品に使われてきた化学物質のPFAS(有機フッ素化合物)。近年は人体への有害性が指摘され、欧米を中心に規制が進んでいる。なかでも、米ミネソタ州はほとんどすべての製品へのPFAS使用を禁止したが、その背景には、ある被害女性の献身的な活動があった。

【画像で見る】化学物質PFASによると思われる被害で死亡した女性


全米に広がるPFAS汚染

2023年7月、米国地質調査所の調査により、米国の水道水の45%が化学物質PFASに汚染されていたことがわかったと米メディア「CNN」は報じている。

PFASは有機フッ素化合物の総称で、フライパンや撥水機能のある服のコーティングなど、多様な日用品から、半導体、医療器具などの産業用まで幅広く使われてきた。4700種類以上が存在し、何百もの家庭用品に使われている。自然界で分解しにくく、環境や水、人体などに蓄積するため、「永遠の化学物質」と言われる。

人体への毒性も指摘されており、米環境保護庁によれば、PFASに曝露すると、がん、肥満、甲状腺疾患、高コレステロール、生殖能力の低下、肝臓障害、ホルモン抑制などの問題を引き起こすという。1940年代から使われていたが、その毒性が後になってからわかり、徐々に規制されてきた。

PFASがどの程度有害なのかは、現在研究が進められているが、それに起因すると思われる健康被害はすでに広い地域で見られる。米紙「ワシントン・ポスト」によると、PFASを使用した数多くの製品を長年製造してきた米化学メーカー3Mが過去に廃棄物を投棄した地域では、がんリスクが高まっていることが判明している。

特に、同社の本社がある米ミネソタ州では、多くの被害が報告されている。カリフォルニア大学バークレー校教授で、製造物責任の専門家デビッド・スンディングによる2017年の研究によると、同社の工場がある同州ワシントン郡では、2003年から2015年の間に死亡した子供のがん罹患率は、周辺地域と比較して171%も高かった。

工場付近でがん患者が急増
同郡で2023年4月、20歳の若さで亡くなったアマラ・ストランデも、15歳で肝細胞がんと診断された。彼女が発症したのは、全国で15歳から39歳までの500万人に1人しか罹患しない、非常にまれで困難な種類のがんだった。彼女は腫瘍を取り除くために20回も手術を受け、放射線治療と化学療法なども並行して受けた。

しかし、5年間の治療も虚しく、彼女のがんは進行し、医師が打てる手立てはなくなった。そんな彼女を救ったのは、音楽だった。治療中も演奏や作曲を続けた彼女は、病気を隠してミネソタの室内合唱団に入団していた。しかし、体の右側に大きな腫瘍ができたために、次第に右腕を動かせなくなり、大好きだったピアノやギターも弾けなくなってしまっていた。

彼女の出身校、タータン高校では、2003年から2018年までの15年間に少なくても21人ががんを発症したという。同校卒業生のデレク・ローウェンもその一人だ。彼は、2004年、脳腫瘍と診断され、手術と理学療法を受けて回復した。2011年にがんは寛解し、彼はリハビリで運動能力を回復させたが、いまも記憶障害が残るそうだ。

生徒が何人もがんで命を落とした同校は、3MがPFAS廃棄物を投棄したとされる場所の近くにあった。

ミネソタ州公害防止局によると、環境規制が不充分だった1950年代と60年代、3Mはワシントン郡の公有埋立地や湖などにPFAS廃棄物を投棄していたという。それによって、地下水が広範囲に汚染され、2004年までに14万人以上の住民が飲んでいた水からPFASが検出されたという。アマラが住んでいたワシントン郡の埋立地の地下水中のPFAS濃度は、健康基準の10倍以上もあった。


立法を後押ししたスピーチ

アマラは、回復の見込みがなくなった2022年、ミネソ...

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https://news.yahoo.co.jp/articles/77f12f10fc78b14314ac1cc50642c64bc313b59c