隙間時間を活用、広がる「スポットワーカー」…好きな条件で気楽に働けるのが魅力
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空き時間に働くスポットワーカーと呼ばれる人たちが増えている。
柔軟な働き方を目指す人は多く、企業の副業解禁も追い風だ。
コロナ禍後の経済活動再開に伴って、外食や小売業は人手不足が深刻で、重要な戦力として期待されている。(経済部 佐野寛貴)
■プライベート優先
今年5月、東京・新橋(港区)にオープンした居酒屋「THE 赤 提灯 」は、接客や皿洗いのアルバイト4人が全員スポットワーカーだ。
人材会社のタイミーがモデル店として運営に参加している。
スマートフォンのアプリで求人を出すと、わずか30分の間に、1週間先の勤務が埋まるという。
仕事が決まって勤務する前には、動画で要領を学ぶ。
メニューは20品に絞られており、客におすすめが紹介できるように、定番を試食する。
料理の特徴を説明した「カンペ」と呼ぶ紙も渡される。
タイミーを使う女性(61)は、「プライベート優先で仕事ができる。
興味を持った職場ですぐに働けるのも魅力だ」と話す。
すでに45店ほどで働き、収入を生活費に充てている。
■1000万人超
タイミーは2018年にサービスを始めた。アプリで、生年月日や性別を登録すると、日付ごとに、求人情報と報酬が示される。
空きがあれば、1時間後から働くことも可能だ。同じ仕事でも、時給は忙しさによって変わる。
登録者の年齢は20〜40歳代が全体の8割を占める。企業の副業解禁もあり、3割が会社員だという。
コロナ禍で浸透し、5月の登録者数は大手4社を合わせて、1000万人を超えた。サービスの新規加入も相次ぎ、市場の拡大が見込まれる。
人材会社ツナググループ・ホールディングスの調査では、求職者1人あたり何件の求人があるかを示す4月の求人倍率は、スポットワーカーが1・69倍だった。
人手不足が深刻な「コンビニスタッフ」や「運送・ドライバー」は8倍に迫ったという。
雇う側は、人材会社に仲介手数料を支払う必要もあり、通常のアルバイトより割高になる。
だが、スタッフが足りないと営業できないので仲介サービスを活用している。
■受け入れ強化
各社は受け入れ態勢を強化している。ファミリーマートはすでに4割の店舗が、仲介サービスを使っている。
昨秋から、スポットワーカー向けにレジ打ちや接客業務を教えるようになった。
単純労働以外の役割を期待する企業も増えており、専門に研修を受けさせている。
ただ、働く環境の整備が十分だとはいえない。募集条件と違う危険な仕事を強いられたり、業務中にトラブルに巻き込まれたりする例もあるという。
仲介大手は安心して働けるように、業界団体、スポットワーク協会を作り、ルールづくりを急いでいる。
人材会社プレシャスパートナーズの高崎誠司社長は「人を集めるには報酬だけでなく、労働環境の良さが重要になる。
雇う側も働き手に選ばれるような努力が欠かせない」と話している。
◆スポットワーカー= オンライン上で求人情報を掲載する仲介サービスに登録し、好きな時間や場所、職種を選んで働く労働者。
アルバイトのような継続的な雇用契約は結ばず、単発となる。スマートフォンの普及で、2010年代後半からサービスが広がった。