ウクライナ侵攻と負傷兵のトラウマ バンジージャンプ使うリハビリも
ロシアによる侵攻を受けるウクライナで、戦場で負傷した兵士らが抱えるトラウマのケアは重要な問題となっている。ウクライナ政府は国民の士気を下げないように兵士らの死傷者数を正式には公表しておらず、全体像は明らかになっていない。
しかし、侵攻開始から1年半が近づくなか、戦争の負傷者は20万人に上るとの報道もあり、精神的ケアの必要な負傷兵の数は増え続けているとみられる。
「心の中に今も戦場で経験した恐怖が残っている」
ウクライナ軍が昨年11月に成功させた南部ヘルソン州の奪還作戦に砲兵部隊の一員として参加し、ロシア軍の砲撃で右腕を失ったアナトリ・キリルスさん(42)。
負傷して半年以上が経つが、安全な場所にいても大きな音を聞くと身を隠そうと体が勝手に反応するようになってしまったという。昨年11月8日に負傷して以来、義手の完成を待って中南部ザポリージャ州の自宅に帰るつもりだが、いつになるかめどは立っていない。
戦場で負った心の傷をどう癒やすのか。ロシアによる侵攻が始まってから1年半近くが経つなか、ウクライナでは医師や市民団体が兵士たちの精神的ケアを模索している。
キリルスさんがリハビリを続ける西部リビウ近郊にある保健省などの傘下の「ハリチナ・リハビリセンター」では、200人の兵士が心のケアなどを受けているという。
このセンターで負傷兵の心のケアにあたる精神科医ダリア・ティシュクンさん(54)は「負傷兵に必要な心のケアの内容は個人差が大きい。それぞれに効果のあるケアを見つけるためには時間をかけていろいろな方法を試みるしかない」と話す。
バンジージャンプのために命綱を取り付けてもらうアナトリ・キリルスさん=2023年8月13日、ウクライナ西部リビウ、宋光祐撮影
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バンジージャンプのためにサッカー競技場の最上階の高さから飛ぶ戦場で左足を失ったウクライナ軍の兵士=2023年8月13日、ウクライナ西部リビウ、宋光祐撮影
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負傷兵らのバンジージャンプを見守るリハビリセンターや支援団体のスタッフら=2023年8月13日、ウクライナ西部リビウ、宋光祐撮影
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