シナリオ作成、キャラ設定・・小説執筆も漫画化もAIが補助。中国電子書籍大手、業界初の大規模言語モデルを発表

テンセント傘下の中国電子書籍大手「閲文集団(China Literature)」は7月19日、業界初の大規模言語モデル(LLM)「閲文妙筆(Yuewen Miao Bi)」と閲文妙筆を基盤に開発した創作支援ツールの発表会を開催した。

閲文集団の侯暁楠・最高経営責任者(CEO)は発表会で、人工知能によるコンテンツ生成(AIGC)は作家の創作を補助するもので、自動車で言えば先進運転支援システム(ADAS)の役割を果たすものだと説明した。小説を執筆するためには、物語のイメージをふくらませ、シナリオをつくり、情報を集めるなど、さまざまな作業が必要になる。侯CEOによると、閲文妙筆を利用すれば作家はこうした作業にかかる時間を大幅に節約できるという。

創作支援ツールの使い方は、まず物語の舞台(古代or現代)を選び、登場人物の性別とタイプ(主役or悪役or中立)を決め、タグ(策略家or天才or穏健派or善良or忠実orたおやか)からイメージに合うものを選択する。次に、登場人物のおおまかな設定をテキストボックスに書き込むと、登場人物の名前とその由来、風貌、性格、経歴、武術の流派、使える武術などが生成される。

設定に従ってAIが登場人物の特徴を生成する
細かい設定に応じた文案作成も可能だ。おおまかなアイデアを書き込むと、登場人物が武術を修練する場所、武術の流派、携える宝物や道具、戦う妖怪や魔物などをAIがまとめて文章化する。さらに、戦闘シーンを細やかに描写した数百字の文章を提案することもできる。

筆者はこの創作支援ツールを実際に使ってみたが、AIは細部まで行き届いたコンテンツを生成できるものの、新たなアイデアを生み出す力に欠けている印象だった。AIは情報の検索や作家のアイデアを整理する作業を効率的に実行できるが、読者を満足させるレベルの文章を生成するレベルには達していないようだ。侯CEOが「AIGCは作家に取って代わる存在ではなく、創作を技術面で支える相棒だ。主役は永遠に作家であり続ける」とし、AIGCの主な役割は作家を補助することだと明言したとおりだった。

閲文集団は6月、AIGCに代表される新たな技術を積極的に活用し、ネット小説のIP(知的財産)化やIPエコシステムの構築を加速するため、新たな事業体制と事業計画を発表した。今後はオーディオブックや漫画、動画、キャラクターなど派生作品の開発にAIを活用していく方針だという。侯CEOは当時、「第1段階として、小説の漫画化作品の制作にAIを活用し始めている。従来は1コマの着彩に2時間前後かかっていたが、現在は1時間以内で完了できる」と述べていた。

7月19日の発表会では、AIによる小説の挿絵生成も紹介した。AIは、作家の指示どおりに登場人物や背景、物語の世界観を示す地図を描いていく。

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