ところが、ちょうどそこへ敗残兵がやってきた。階級章から、上等兵とみられるその男の目は血走っている。家族の方に目を据えたまま、こう言い放った。
 「おまえら沖縄人は皆スパイだ。捕虜に出て行くときは、後ろから手りゅう弾を投げて、撃ち殺してやるから覚えておれ」

 脅しを受けても、家族の意志は変わらない。「こんな敗残兵に殺されてたまるか」。男の姿が見えなくなるのを確かめてから、全員で米軍陣地に向かい、捕虜になった。
 大城さんは当時を思い出すたびに怒りを覚えるという。「何が『皆スパイ』か。皆ですよ。沖縄人が何をスパイしたか」

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