月日は流れて、
俺達は結婚して子供も出来て40歳になった。

今年の6月に家族で街はずれを散歩してたら、
老婆の後ろを歩くそいつを見つけた。

それで懐かしくて話しかけたら、
奴はうまく言葉を喋れないようになってたんだよ。

隣の老婆(多分Aの母親)に事情を聞いたら、
あれから約25年間ずっと引きこもってしまい、
ほぼ外には出ないらしい。
俺は凄く申し訳なくなって、
その時に持ってた現金のすべて(5万円)を渡して、
「これで美味しい物を食べて下さい!」
って伝えたんだ。

Aはニコニコ笑って、
ゆっくりと「お寿司が食べたい」って言った。
それを見たAの母親は泣いて喜んで、
自分も良いことした実感だけは残った。

俺の嫁と子どもは号泣する、
Aの母親の背中をさすっていたよ…。
自分で言うのもなんだけど、
俺は本当に良い妻と娘を持った。
俺は中学時分から抱えてた
複雑な胸のつっかえが取れた気がした。

Aは元々友達いないからひきこもりになったのが
誰のせいか原因ははっきりとは分からないけど
(もしかしたら俺が直接悪いんだ!と逆恨みしていたかもしれない)、
その5万円で美味しい物を食べて欲しいと心から思った。

俺が切っ掛けになれるかどうかは分からないが、
かつての友人に励まされたことで、
人生を変える原動力にしてくれたら…と。
自分の心のどこかでくすぶっていた罪悪感が、
消えてなくなったよ。
正直ほっとした。

以上、不登校だった同級生と約25年ぶりに会ったので
お金を渡してきた話。