新型固体リチウムイオン電池やコア材料の技術開発と産業化に取り組む「重慶太藍新能源(Talent New Energy)」が、プレシリーズBで数億元(数十億〜百数十億円)を調達した。出資を主導したのは中金資本(CICC Capital)と正奇控股(Zhengqi Holding)で、レジェンド・キャピタル(Legend Capital)なども前回に続いて出資した。

固体電池はエネルギー密度が最大500Wh/kgに達し、高速充放電が可能で、発火の危険が低いほか、低温でも性能が急降下せず、寿命は1万サイクル以上に及ぶ。液体電池の性能が限界近くに達した現在、電池メーカーや自動車メーカーは固体電池の革命的な新技術に着目している。

固体電池の技術的アプローチは大きく分けて、酸化物系、硫化物系、ポリマー系の3種類ある。現状はいずれも打破すべき決定的な課題を抱えている。

2018年に設立された太藍新能源は、そのうちの酸化物系に取り組む代表的な企業だ。酸化物系固体電解質はリチウムイオンの伝導率が低く、電極と電解質が固体同士のため接触を維持するのが難しいという2つの問題に直面している。同社ではこれに対し、電解質を超薄膜化する技術と界面を柔軟化する技術を開発した。この2つのコア技術をベースに、酸化物系固体電解質と駆動用固体リチウムイオン電池の開発に成功した。同時に、複数の材料や半固体・全固体電池に関する先進的技術を獲得している。

同社の製品は第1世代が液体電解質の含有量5〜10%の半固体電池、第2世代は5%以下の半固体電池で、年末には量産に入る予定だ。全固体電池となるのは第3世代製品。現在、実用化に向け全力で開発を進めている段階だ。

太藍新能源の李彦CEOは「弊社の製品は総合力に優れたオールラウンダーを目指している。自動車業界のエネルギーシフトが進む中で、駆動用電池のサイクル寿命を延ばすと同時に、エネルギー密度を効果的に上げるよう努力し続けたい」と述べている。

李CEOによると、現段階ですでに量産中の半固体電池のエネルギー密度は最大350〜400Wh/kgで、充電時は0%から100%まで平均4C(15分でほぼ満充電)の充電スピードを維持し、寿命は1000〜1500サイクルとなっている。

コスト削減にも徹底的に取り組んでいる。李CEOは「弊社の半固体電池生産ラインでは工程の80%以上で、成熟した液体電池の製造技術を活用している。重要部分の技術のみを刷新することでコストは液体電池と同等にまで下げており、量産が始まればさらに下げられる可能性もある」と述べる。

性能、価格をクリアしたら、電池メーカーにとって最後の難関は納品量を保証することだ。

すでに稼働中の工場と建設中の工場を合わせた太藍新能源の生産力は12.2GWhに達する。小型の半固体電池を手がける生産力0.2GWhの重慶第1工場はすでにフル稼働しており、車載用半固体電池を手がける生産力2GWhの重慶第2工場は来年6月に稼働予定、生産力10GWhの淮南第1工場は来年末以降の稼働を予定している。

顧客の開拓については、中国トップの電動二輪車メーカーと駆動用電池のサプライヤーとして契約を結んだほか、複数メーカー向けに半固体電池のサンプル試験を実施中だ。

固体電池はリチウムイオン電池の「最終形」として期待されており、駆動用電池メーカーも自動車メーカーも次世代の製品で機先を制したいと考えている。太藍新能源は中でも一歩先を行く1社だ。李CEOは「太藍新能源は自社を『固体電池の普及者』と定義し、これを目指していく」と述べている。

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