2021年、コロナの影響によって自営業の経営が悪化し、収入が激減したのだ。加えて、子どもの進路が急遽変更となり、私立大学への進学が決定。住宅ローンの支払いの継続も厳しくなるなど家計は一気に火の車と化した。

 結局、子どもの進学費用は自分たちで用意ができず、不足分は実家から支援を受けることとなった。

 さらに、住宅ローンの支払いのために奥さんはパートに出て働かざるを得なくなった。坂田さん自身も夜間は週3日ほど、清掃のアルバイトにでて収入を補うようになってしまったのだ。

iDeCoに仕掛けられている罠
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 今回、坂田さんが絶望の淵に追いやられてしまった背景には、iDeCoに仕掛けられているある罠が存在している。

 それは、「iDeCoは原則として60歳にならなければ拠出してきた掛金と運用益を受け取ることができない」という資金拘束の存在だ。それゆえ、iDeCoの口座内にどれだけの資産が眠っていようと、現役世代のうちは引き出すことができない。

 いわば、iDeCoの口座内のお金はあってないようなものなのだ。

 将来に備えて必死にiDeCoで蓄えを増やしてきた坂田さんだったが、そのお金は家計が急変しても一切使えないものとなっている。

 使えるお金は400万円の貯金のみ。そこにコロナに子どもの進路の変更とお金に絡む想定外の事態が頻発。収支のバランスが崩れたところに、iDeCoにつぎ込んだ莫大な資産は切り崩すことができない。

 資産形成にいそしんだものの、資金拘束の存在からいざというときに使えるお金が十分になかった結果、家計が崩壊する状況になってしまったのだ。

 もし、iDeCoのもつ資金拘束というデメリットの重大さに坂田さんが気づき、計画的にiDeCoを利用していればこのように家計が崩壊することもなかっただろう。

 坂田さんは「iDeCoなんてやらなければよかった!」と嘆いていた。https://news.yahoo.co.jp/articles/15376fc5bfd281be9ca8783196679e7a4bbed173