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受刑者を呼ぶ時は「さん」付けで 暴行問題の名古屋刑務所で開始

名古屋刑務所の刑務官が受刑者に暴行や暴言を繰り返した問題を受け、名古屋刑務所は8月から受刑者を「さん付け」で呼ぶ取り組みを始めた。6月に公表された法務省の再発防止策に、受刑者を蔑視する不適切な呼称を直ちに禁止すると盛り込まれていた。法務省は処遇現場で浸透するか、課題を洗い出したい考えだ。

 ◇一部受刑者は「くすぐったい」

 名古屋刑務所では2021年11月〜22年9月、若手刑務官22人が40〜60代の男性受刑者3人に計419件の暴行や不適切な処遇を繰り返していたとされる。

 名古屋刑務所の刑務官らは受刑者を「懲役」「やつら」などと呼んでいたといい、有識者でつくる第三者委員会は「人権意識が希薄だ」と問題視。上下関係が固定しやすい呼称の廃止を課題に挙げ、受刑者を呼び捨てにする慣行についても見直しを求めた。

 提言を受け、法務省がまとめた再発防止策では、規律・秩序を過度に重視する組織風土を改めるため、受刑者を蔑視する呼称は直ちに禁止し、呼び捨てについても見直しを検討するとしていた。

 関係者によると、名古屋刑務所には暴力団加入歴のある受刑者が一定数おり、現場から「規律が保てない」との懸念も示されたという。ただ、既に全国の女子刑務所で「さん付け」呼称を始めていた上、問題を起こした刑務所が率先して行動に移そうと、8月から試行的に始めた。目立ったトラブルはないものの、呼び捨てに慣れた一部の受刑者からは「『さん付け』なんてくすぐったい」との声も上がっているという。

 法務省は25年から導入される「拘禁刑」を見据え、処遇の見直しを進めている。受刑者の呼称については今後3年以内をめどに各施設で議論を進め、意見を集約する方針。