サンライズワールド クリエイターインタビュー 第18回
『聖戦士ダンバイン』原作・総監督 富野由悠季
https://sunrise-world.net/feature/feature.php?id=9433

――振り返ってみて『ダンバイン』の可能性というのはどのあたりにあったと思いますか。

富野 メカもののデザインについては『ダンバイン』発で、アニメ業界全体に新たな方向性を波及させたということはいえると思います。『ダンバイン』を見ると反省の話しか出てこないんですが、デザインまわりとかでは自己卑下するつもりはさらさらなくて、むしろ威張ってます(笑)。デザインでいうとウィル・ウィプスやゲア・ガリング、ゴラオンにグラン・ガラン、みんな好きなデザインです。でも当時はああいう巨大メカも手描きだったから、限界が見えちゃったのよね。3秒しか出てこないメカを、そんなに描きこむことも難しいし、トレス線も太かった。だからここに関しては、『Gのレコンギスタ』で3DCGを使ったのと同じ感じで、巨大オーラシップをリメイクしたい気持ちはあるんです。グラン・ガランなんかは見ればわかる通り、(『Gのレコンギスタ』の)カシーバ・ミコシの原型みたいなデザインですからね。そこには90歳になっても、リメイクしたいと思える価値がありますね。

――『ネクスト・ダンバイン』の可能性が見えてきた感じですね。

富野 ただ、それが今作るべき作品なのかどうかは難しいところです。『ダンバイン』は基本的にファンタジーの世界なんです。一方で現在は、社会性を持った人間が地球という限られたキャパシティの中で、いかに永らえられるかということを考えなくてはいけない時代になっている。そこに『ダンバイン』という題材を使ってうまく迫ることができるのかどうか。そこに自分としてはまだ突破できない壁があるように感じるんです。……むしろ『ダンバイン』の可能性でいうなら、別のところにあるように思います。

――それはどこですか?

富野 実は今回、『ダンバイン』を見直してベル・アールがとても魅力的だということを再発見したんです。これは自分が年をとったからかもしれないのですが、この年齢になったからこそ、こういうキャラクターをちゃんと描いていく方法をしっかり考えたほうがいいんじゃないかとも思いました。ベル・アールには、アニメが持っている根本的な幼児性、あるいは可愛らしさといったものがあります。ベル・アールを主役にして、『ちびまる子ちゃん』に勝てるような作品を構想できれば、また新しい“バイストン・ウェル物語”というものもありえるんじゃないか。そう考えるのは決してバカなことではないんじゃないか、というふうに思いました。