■変遷する知的障害の基準

 そもそも知的障害の基準を「IQ70未満」としたのは1970年代以降のことで、それ以前は「IQ85未満」が基準だった時期がありました。

 現在、日本の医療現場では、世界保健機関(WHO)が発刊するICD(国際疾病分類)の第10版(ICD-10)を使用して、疾病分類を行っています(2023年3月現在、第11版への切り替え中)。

 このICDですが第9版までは、およそ10年単位で改訂が繰り返されてきました。1965〜1974年は第8版(ICD-8)が使用され、この10年間は、IQ70〜84が境界線精神遅滞という定義がなされていました。

 「精神遅滞」は、今でいう「知的障害」のことです。つまり、現在の「境界知能」は、かつて知的障害に含まれていたことになります。これを現在の日本に当てはめますと、実に約1700万人(人口の約14%、およそ7人に1人)が知的障害という推計になります。

 それが第9版(ICD-9:1975〜1984年)以降になると、知的障害は現在のIQ70未満に変更となりました。変更の背景には、IQ70〜84も含めてしまうとあまりに知的障害の人口が多くなってしまうので、支援者の確保や財政の面でも追い付かなくなるという事情もあったと推測されます。

https://news.yahoo.co.jp/articles/d23d68d80ad3404fc6646b077118c9e2ee090717