新型コロナウイルスの無料検査事業を受託した事業者の申請内容に虚偽があったとして、東京都など6都府県が申請分のうち計約267億円の補助金を交付しないと決めていたことが本紙の集計で判明した。
行政のチェックが甘く、費用を大きく上回る補助金を得られる仕組みが、不正申請を呼び込んだ可能性がある。
◆267億円の補助金を取り消し、不交付
PCR検査や抗原検査を無料で受けられる事業は、2021年12月~今年5月、各都道府県が医療機関や企業に委託して実施。検査場整備の初期費用や検査費用は、国の交付金を財源とする都道府県の補助金で賄う仕組みだった。
このうち東京都が183億円、大阪府が81億9000万円、千葉県が1億6000万円、富山県が5000万円、石川県が2000万円、兵庫県が400万円の補助金の交付取り消しや不交付を決めたことが判明した。
都は6月、11事業者に不正があったと公表した。検査をしていないのにしたように偽ったり、検査件数を水増ししたり、検査場以外で検体を集めるなどの不正が確認されたという。

◆現地確認しないまま事業者登録
なぜ不正は見過ごされたのか。都によると、書類さえ整っていれば、検査場の現地確認はしないまま事業者として登録していた。
登録事業者は週1回、検査件数を都に報告する。受検者の名前や連絡先が書かれた申込書を控えておく必要はあるが、提出は不要。委託された広告会社のスタッフらがチェックするのは、件数に不自然さがないかだけだった。
事業を所管した内閣官房によると、制度は検討を始めてからわずか3カ月後に始まった。担当者は「感染対策と経済活動の両立を考え、制度設計を急いだ側面はある」と振り返る。

◆「性善説に立って申請を通していた」
チェック体制については「件数が膨大になることが見込まれた。事業者に細かい報告を求めると都道府県の確認作業も膨大になる恐れがあり、具体的なチェック方法は都道府県の裁量に委ねた」とした。実際、埼玉県や和歌山県は事業者に逐一、申込書を提出させていたという。
都内ではピーク時、週に38万件の報告があった。都の担当者は「1人でも多くの人に検査を受けてもらおうと、性善説に立って申請を通していた。

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