カメの甲羅には「人類の核の歴史」が記録されている!
urtle Shells Keep a Record of Humans’ Nuclear History
https://www.smithsonianmag.com/smart-news/turtle-shells-keep-a-record-of-humans-nuclear-history-180982805/
Anthropogenic uranium signatures in turtles, tortoises, and sea turtles from nuclear sites
https://academic.oup.com/pnasnexus/article/2/8/pgad241/7244772
かつて、地球上では数多くの核実験が行われていました。
1945年以降、広島と長崎への原爆投下を含め核爆発は2000回以上にも及んでいます。
1963年に部分的核実験禁止条約(PTBT)が締結されて以降は、放射性物質がほとんど飛び散らない地下核実験が主流となりましたが、それまでの約18年間は、主に大気圏内や水中で核実験が行われていました。
人間のみならず、周囲の環境などにも大きな影響を与える核爆発の影響は、どのように地球に刻まれていくのでしょうか。
今回、米パシフィックノースウェスト国立研究所(PNNL)の地球科学者サイラー・コンラッド氏ら研究チームは、カメの甲羅に蓄積されるウラン同位体を測定することで、過去の核爆発が及ぼす環境への影響を測定する新しい方法を発見しました。
一体カメの甲羅にはどのようにして人類の負の歴史が刻まれているのでしょうか。
研究の詳細は、2023年8月22日付で『PNAS Nexus』に掲載されています。
カメの甲羅が「核の歴史の証拠」を保存
核爆発が起きると、「放射性降下物(フォールアウト)」という粒子とガスが広範囲に広がって土壌や水を汚染し、放射線を放出する放射性物質が残留してしまいます。
これらの放射性物質は地球全体に広がり、自然界の植物や動物にも蓄積されていきます。
特に過去1000回以上もの核実験が行われたアメリカでは、土壌や水が大量に汚染されているとされており、3000万から8000万立方メートルの土壌と、1800億から4700億立方メートルの水が放射性物質で汚染されていると推定されています。
科学者たちは長い間、環境中の放射性物質を追跡する方法を模索してきました。特にこれまでは、動物の体内の放射性物質を正確に測定するのは難しいとされてきましたが、今回の新しい研究がその問題に突破口を開いたようです。
今回発表された研究により、カメの甲羅が「核の歴史の証拠」を保存しているという事実が明らかとなったのです。
この発見によって過去の核爆発が環境にどのような影響を与えたかを、新たな方法で調査することができるようになりました。
この発見は、動物の体内の放射性物質を測るうえで信頼性が高く、放射性物質の長期的な影響をより詳しく知る手がかりとなりそうです。
さらに研究者たちは、組織が徐々に成長していく他の生物においても、放射性物質を追跡するのに役立つ可能性があるとしています。
例えば、サンゴ、サボテンの棘、軟体動物、鳥の羽なども過去の記録を保持している可能性があります。
今回の研究結果から、研究者たちは、様々な場所で採取された生物のデータ、土壌、植物、水などの情報を組み合わせることで、その地域の汚染がどのように広がっているのかを、より正確に知ることができると考えています。
日本では福島第一原子力発電所において処理水の海洋放出が始まっています。
核爆発での汚染だけでなく、このような現代的な状況においても、今回の研究結果が放射性物質による汚染の有無や追跡に役立つ可能性があります。
https://nazology.net/archives/132967