[ムンバイ 28日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 南アフリカで開かれた新興5カ国(BRICS)首脳会議を機に、中国のインドに対する直接投資が再拡大するとの期待が高まっている。インドは2020年の国境紛争以来、中国からの直接投資に事前許可制を導入し、投資は劇的に減速した。だがインドのモディ首相と中国の習近平国家主席が会議のかたわらで意見交換したことは、雪解けに向けた当局の意志の現れかもしれない。

意見交換の焦点は国境を巡る未解決の問題だったと見られるが、来月ニューデリーで開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議に向け、より幅広い両国間問題についての方向付けにもつながった。事前許可制の導入から3年、インドは中国からの直接投資受け入れ拡大に備えているように見受けられる。

事前許可制の影響は絶大だった。シンクタンク、ゲートウェイ・ハウスによると、中国からの直接投資は元々、医薬品、ハイテク、自動車など合わせて約60億ドル(8790億円)と小規模だったが、インドの公式データを見ると2021年には1170万ドルに急減している。

インドが、貿易相手国第2位の中国に対する姿勢を軟化させているのは間違いなさそうだ。インド当局は再生可能エネルギーや電子機器などのセクターで投資を許可してきた。後者は、インド現地工場で生産している米アップルのような企業が中国の部品メーカーの進出を望んでいることが誘因の1つだ。

企業同士の提携も進んでいる。インドは2020年、中国のファストファッション通販「SHEIN(シーイン)」のアプリを禁止したが、ウォール・ストリート・ジャーナルが5月に報じたところでは、同社は現在インドの財閥大手リライアンス・インダストリーズの小売り部門と提携してインドに復帰しつつある。

またインドの複合企業、JSWグループは、中国の自動車大手、上海汽車(SAIC)傘下の英MGモーター・インディアへの出資を増やす予定だと、インドのエコノミック・タイムズが6月に伝えた。

今後は直接投資の許可がさらに迅速化し、件数も増える可能性がある。インドは昨年3月時点で、申請のあった直接投資347件中、66件しか許可していなかった。さらに実際の投資件数は許可件数に追いついておらず、両国関係改善でこのギャップも縮小する可能性がある。

今後の優先分野には電気自動車(EV)など、インド国内での生産後押しにつながるセクターが含まれるかもしれない。一方で、中国企業が以前大きな関心を示していたインドのデジタルエコノミー分野では、データセキュリティーの観点から今後も投資を締め出す可能性がある。

モディ首相はこれまで、中国との政治的関係が改善すれば経済的関係も深めてきた。国境で比較的落ち着いた状況が続くようなら、中国からの投資受け入れ拡大につながるかもしれない。

https://jp.reuters.com/article/india-china-breakingviews-idJPKBN304062