NTT法改正が議論される背景は、防衛費増額のための財源としてNTT株の売却が浮上しているためだ。
ただし、正直言って合点がいかない。たしかに、政府による3分の1以上の株式保有があり、完全に売却すると5兆円程度の財源になる。しかしながら、現状でも年間3%ほどの利回りで1400億円ほどの配当がある。一時的な売却益と長期にわたる配当金の合計では理論上差はない。一方、政府株を売却すると、安全保障上の問題になるという指摘が行われているが、こちらも意味不明だ。米国のAT&Tや英国のBTグループでは政府所有株はない。ドイツのドイツテレコムやフランスのオレンジでは政府保有株はあるが、その比率は10%台に低下している。米国、英国、ドイツ、フランスではそれぞれ外資規制があり、政府株の有無と関係はない。
NTT法でも、外資を3分の1未満とする規制とともに外為法による外資規制がある。これらの外資規制を撤廃・改正しないのであれば、政府株売却が直ちに安全保障上の問題になるとはかぎらない。現在のNTT株の外資比率は22・36%(6月30日現在)だが、政府株を全部売却しても、外資比率は3分の1までしか上昇しない。

NTT法と外為法による外資規制は、欧米先進国と遜色ないので、もし安全保障上の問題を懸念するのであれば、今の外資規制を継続すればいい。
財源問題でもなく安全保障問題でもないなら、本当の理由はどこにあるのか。

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