BRICS拡大 世界の分断を助長するな

中国、インド、ブラジル、ロシア、南アフリカで構成する新興5カ国(BRICS)が新たに6カ国の加盟を認めた。

加盟国拡大を主導した中国には、「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国との連携を強化し、米欧への対抗軸にしたいとの思惑がある。ロシアも同様だ。

中国の習近平国家主席は「加盟国拡大は歴史的だ」と自賛したが、対立の発想で拡大を進めることは、国際社会のさらなる分断と対立を助長する恐れがあり、看過できない。

BRICSにはインドやブラジルなどの民主主義国も加盟しており、もともと共通する理念や政策はない。中露は、米欧への対抗姿勢が、逆にBRICS内の不協和音を増大させかねないと知るべきだ。

来年1月から新たに加盟するのは、アルゼンチン、エチオピア、エジプト、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)の6カ国だ。

このうち、サウジ、UAE、イランは世界屈指の産油国である。また、サウジとエジプトは長年の親米国だ。両国の新規加盟は、中東・北アフリカ地域での米国の影響力低下を如実に示している。

代わって存在感を高めているのが、イランとサウジの国交正常化を仲介した中国だ。反米的で、ウクライナを侵略するロシアへ無人機(ドローン)などを供与しているイランの加盟は、BRICSに反米的な性格をもたらす懸念がある。

ただし、BRICSは一枚岩ではない。

ブラジルのルラ大統領は、「BRICSは新興国・途上国の組織化が目的で米国やG7に対抗するためのものでない」と述べた。日米豪との協力枠組み「クアッド」に参加するインドは、加盟国拡大にも慎重だったという。

中国とロシアは、拡大したBRICSを利用して国際秩序の再編を企図している。だが、国連憲章に反してウクライナを侵略するロシアと、南シナ海などで力による現状変更を進める中国にそうした資格などないことは明らかだ。

ブラジルはウクライナ侵略の長期化に苦言を呈した。BRICSが今なすべきことは、ロシアに即時撤退を働きかけ、侵略をやめさせることである。

https://www.sankei.com/article/20230904-3SQUHBFEFVPGNFVSUM27T4K6U4/