一般的に公立の学校給食や寮食事提供の業者は入札で決まる。入札金額は契約期間内の運営費(人件費+経費+利益)の合計額である(食材費は実費)。参考までに入札ではないけれども、たまたま僕が先月60食規模平日昼食のみの某食堂の委託費見積を提出したときの算出金額を出してみる。
社員月30万1名とパート2名体制で、経費と利益を込みで月90万円台。この金額ならば確保できて人件費が枠内でおさまればたとえ食数が1日1食でも運営できる。食材費は1食当たりの単価内でおさめればいい。ローリスクでしょ。

正常に入札と落札が行われていれば給食事業はローリスクで破産するような事態には陥らないのだ。ところが事業所をゲットしたいがために滅茶苦茶なことをする会社も存在するのだ。
一番酷いケースが20年近く前に某地方の官公庁関係の寮の食事提供業務である。僕は前提条件をふまえたうえで人件費や経費を算出して入札金額を算出した。具体的な金額は忘れてしまったが、年で1千万は余裕でこえていたと思う。失注した。現行の会社が落札した。落札金額をみてびっくりした。12万円だったからだ。
月ではなく年額だ。月1万円。ありえない。からくりはこうだ。寮の食事単価は高めに設定されていた。朝食と夕食の提供だった。定員×食事単価の売上が約束されていて、食べても食べなくても、売上は確保されていた。100名定員で朝夕2回の食事提供でそれぞれ単価500円で月25日営業なら250万の売上。
喫食率が50%なら売上の半分125万が利益になる。その寮は長く運営していて(例よりも大きな規模だった)、特に朝食の喫食率がめちゃくちゃ低くなっていたため(30%くらいだったと記憶)、最初から30%しか調理せず本来食材費であるべきの残り70%をそのまま利益にすることができていた。
そのため月1万円で入札することができたという話だった。こういった事情は外部に漏れないので現行既存業者の運営が続くのである。

大昔の話なので、今はこういうビジネスモデルは成立しないだろう。だが本来100%をかけるべき食材費から利益を確保することで、入札金額を圧縮して思い切り低く下げる方法は今も生きている。
ただ昨今の想定をこえる食材費の高騰で、食材から利益を確保できなくなったら、この方法では人件費の確保もままなくなるはずだ。その人件費も最低賃金の大幅なアップで上がる一方だ。