昨年8月の記録的豪雨の影響で被災し、一部区間で運休が続くJR米坂線を巡り、JR東日本は8日、小国町で開いた「JR米坂線復旧検討会議」の初会合で、鉄道での復旧を前提に検討を始める方針を表明した。ただ、「単独での判断は難しい」として、試算した復旧費用約86億円を自治体などと分担した場合の負担額を示すとともに、鉄道の利用者減少といった課題克服へ向けた議論を呼びかけた。
会議には、JR東、山形、新潟両県の幹部、沿線7市町村の副市町村長らに加え、国土交通省の運輸局の担当者(オブザーバー)の計13人が出席。冒頭のあいさつを除いて非公開で行われ、終了後、JR東などが報道陣の取材に応じた。
米沢駅(米沢市)と坂町駅(新潟県村上市)を結ぶ米坂線は現在、米沢駅と今泉駅(長井市)の区間のみ列車が運行し、今泉駅―坂町駅は代行バスが走る。
会議では、JR東が4月に公表した復旧費用86億円の内訳が示され、本県側は崩落した小白川 橋梁きょうりょう の新設費用16億円を含め55億円とされた。
鉄道軌道整備法に基づく災害復旧補助制度では、国と地方自治体が4分の1ずつ、鉄道事業者が2分の1を負担する。JR東は、試算を当てはめると、国と地方が21・5億円ずつ、JR東が43億円の負担となると説明。さらに、被害状況に応じて地方負担分を算出した場合、山形県側は約13・75億円、新潟県側は約7・75億円の負担となることが初めて示された。
一方、会議でJR東が示した資料によると、沿線7市町村の人口減少の割合に比べ、米坂線の利用者減少の割合が上回っていると指摘。1990年と2020年を比べると、人口が約2割減ったのに対し、1キロ・メートルあたりの1日の平均利用者数「輸送密度」は約7割も減ったとした。
また、米坂線の利用者の内訳も初めて公表。2019年度の1日あたりの利用者数1775人のうち、山形県内のみの利用が1405人と約8割だったと明かされた。
JR東新潟支社の三島大輔・企画総務部長は「復旧に向けての要望、期待が強いことが改めてわかった。ただちに違う復旧の選択肢を考えるのではなく、まずは鉄道での復旧に向けて全力で検討を進めてまいりたい」と述べる一方、「多額の復旧工事費の負担と、利用状況が厳しいという問題意識を持っている。引き続き課題の解決に向けて協議していきたい」と語った。
山形県の岡本泰輔・みらい企画創造部長は「早期復旧に取り組むようお願いした。国に対しても制度の拡充を働きかけていきたい」と話した。新潟県の太田勇二・交通政策局長は「会議の開催は復旧に向けた第一歩。これまで(米坂線は)あって当たり前だったが、これを機に活性化の議論を本気でやることが大事で、一日でも早く出口を見つけていく」と述べた。
会議に出席した沿線自治体のうち、小国町の阿部英明副町長は「鉄道として、早期の復旧を求めたい」と、飯豊町の高橋弘之副町長は「全国的な公共交通のネットワークを維持するためには国が責務を果たすべきだ。災害復旧には国に全額負担を求めていきたい」などと発言したという。
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