米小売大手ウォルマートは今月、自社のトラック運転手に対し、初年度から最高で11万ドル(約1400万円)の給与を支払うと発表した。在職期間が長いほど金額は上がるという。深刻なトラック運転手不足が続く米国では、大企業が人材確保の取り組みを強化している。
米国では今、ブルーカラーや店舗や工場などの現場の最前線で働く「フロントラインワーカー」が勢いを取り戻している。スターバックスやアマゾンでは労働組合結成の動きが相次ぎ、昨年10月には多くの企業で従業員が「ストライクトーバー」と称して職場放棄やストライキを決行した。フロントラインワーカーやブルーカラーは、給与や福利厚生の改善に加え、経営者や上司が職場で自分たちに対し尊厳と敬意をもって接することを求めている。
また、ロシアのウクライナ侵攻により、サプライチェーンの混乱に拍車がかかり、既に過去最高だったインフレ率はさらに上昇。両国は世界の小麦輸出の約30%を占めており、食料品からガソリン、半導体に至るまで、あらゆる物品の値段が劇的に上がっている。
ウォルマートの最高11万ドルという年収額には、多くの人は驚くかもしれない。だが米国では、トラック運転手が国内の物品輸送の70%以上を担っており、商取引に欠かせない存在だ。そのトラック運転手が現在、深刻な人手不足を抱えている。新型コロナウイルスの流行が始まって以降、トラック運転手の数は6%減少。さらに、コロナ禍では新人に対して大型車の高度な運転技術を習得させるのは難しかった。
ウォルマートは、このジレンマを理解し、手を打ったのだ。同社は、新たにトラック運転手育成プログラムも立ち上げた。これにより、テキサス州ダラスとデラウェア州ドーバーのサプライチェーン関連職に就く従業員が12週間の研修を経て商用運転免許証(CDL)を取得し、同社のトラック運転手となった。
ウォルマートはまた、トラック運転手を含む従業員に対するスキルアップ支援として、大学の授業料援助などを行っている。熟練運転手はトレーナーとして、次世代の育成に当たる。
こうしたプログラムが増えれば、十分なトラック運転手が供給され、雇用の創出や、サプライチェーンの混乱の緩和、インフレの抑制にもつながるだろう。
https://forbesjapan.com/articles/detail/46951?read_more=1