ジャニーさんへのエンターテインメントへの熱い思い、託したバトンは、必ずやジュリー(藤島景子)さん、滝沢(秀明)さんをはじめ、次の時代を担うジャニーズのみなさまへと、しっかりと受け継がれていくと私は確信しております」


 2019年9月に東京ドームで行われた故ジャニー喜多川氏のお別れの会で、代読された安倍首相(当時)の弔辞の一節だ。「さん」付けに親しみが込められていた。

 ジャニー氏の長年にわたる性加害を認定した再発防止チームの調査報告書は、被害拡大の理由として大マスコミの責任にも言及。沈黙を続けたメディア批判は当然だが、すっぽり抜け落ちているのはジャニーズ事務所と安倍氏との蜜月関係だ。

 史上最長の通算8年8カ月に及んだ首相在職中、安倍氏はとことん、ジャニーズ人気を政治利用してきた。18年末には福島復興を支援してきたTOKIOのメンバーと首相官邸で懇談し、19年5月には行きつけのピザ店で会食。翌月のG20大阪サミットの開幕前日には、首脳会談の合間をぬって関ジャニ∞・村上信五のインタビューを受け、翌20年の元日にはラジオの新春番組でV6・岡田准一と対談した。

 19年11月には東京ドームであった嵐のコンサートに足を運び、ステージ裏でメンバーと面会。数日前の天皇即位を祝う「国民祭典」で奉祝曲を披露したことに感謝の気持ちを伝えた。多くのメンバーと交流するたび、安倍氏は官邸のインスタグラムなどで情報発信。好感度アップを図ったのだ。

 また、安倍長期政権の時代はジャニーズの「報道進出」の時期と重なる。

 日本テレビ系「news zero」でキャスターを務める桜井翔をはじめ、同じく日テレ系「news every.」のキャスターに小山慶一郎が、TBS系「ビビット」のMCには国分太一が抜擢。今も「サンデーLIVE!!」(テレビ朝日系)に東山紀之、「シューイチ」(日テレ系)に中丸雄一と、所属タレントが政治を扱う報道・情報番組に出演中だ。安倍氏のジャニーズ接近は、民放の政権批判を封じ込めようとする狙いもあったに違いない。

■被害者に「時の為政者まで黙殺」と絶望を与え…

 04年には週刊文春との裁判で、ジャニー氏の性暴力を真実と認める判決が確定した。

 それを知ってか知らずか、安倍氏はジャニーズ人気にあやかり、事務所側も政権にスリ寄ることで「権威付け」に利用する“共犯関係”を築き上げたのだ。

政治利用されたタレントに罪はありませんが、いわゆる『身体検査』そっちのけ、過去にたびたび浮上した性加害疑惑に見て見ぬふりを決め込んだ安倍元首相の責任は重い。ジャニーズとの蜜月は、性被害の当事者にはどう映ったことか。メディアだけでなく、時の為政者まで黙殺するのかと感じ、ますます声を上げてもムダに思え、絶望したのは想像に難くない。本来なら政治が救うべき人々を見捨てたも同然です。アベ政治を引き継ぐ今の政権・与党にはその贖罪の責任がある。被害者救済に積極的に関与し、自浄能力を発揮すべきです」(高千穂大教授・五野井郁夫氏=国際政治学)
https://news.yahoo.co.jp/articles/8d746eb8165ac3ccb8645728a6d8b1b083994e5e