編集部:
「脳卒中」とは、なんでしょうか?
上田先生:
脳卒中は病気の名前ではなく、「脳梗塞」「脳出血」「くも膜下出血」など、脳の血管が詰まったり、破れたりした状態の総称です。詰まったり、破れたりした血管の太さや場所によって異なる症状が出ます。医学用語としては、「脳血管障害」と呼ばれています。
編集部:
それぞれの病気について、もう少し教えてください。
上田先生:
脳梗塞は、脳の血管が狭くなったり、詰まったりして血液が流れなくなり、それ以降の脳が虚血になることによって脳細胞が死滅し、機能障害をきたす疾患です。いわゆる血液がドロドロな人や、血液を全身に送り届けるポンプとなる心臓の機能に問題のある人などに起こりやすいと言われています。
編集部:
脳出血についても教えてください。
上田先生:
脳出血は脳の中で血管が破れて、脳の組織の中に出血してしまった状態で、高血圧の人にとても多くみられます。脳出血もやはり、その先の脳に血液が送られなくなるために、様々な機能障害を引き起こします。
編集部:
では、くも膜下出血についても教えてください。
上田先生:
くも膜下出血は、脳出血と同じく、脳の血管が破れた状態ですが、脳の隙間を通る太い血管が破れたことで脳の組織の中ではなく、脳を覆っている「くも膜」と脳の間に出血してしまう疾患です。脳の動脈に「脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)」という風船状のコブが破裂するというのが最も多い原因です。
編集部:
脳卒中は日本人の死因として、上位なのですか?
上田先生:
脳卒中はかつて、日本人の死因の1位を占めていました。しかし、血圧管理などの基礎疾患治療、MRI検査やCT検査などによる早期発見、血管内カテーテル治療などの外科的治療、内服薬の適切な使用による治療の発展のおかげで、年々、死亡者数は減少傾向にあります。現在は、日本人の死因の第4位となっています。
編集部:
減ってきているのですね。
上田先生:
そうですね。ただし、減少しているのはあくまでも「死亡者数」であり、脳卒中の発症が減っているわけではありません。例えば、脳梗塞の発症に関しては、食生活の変化や高齢化社会に伴い、現在も横ばいからやや上昇傾向にあります。
編集部:
なるほど。脳卒中を発症する人は減っていないのですね。
上田先生:
はい。死亡者は少なくなったのですが、その分、脳梗塞後遺症を抱える人が増えています。要介護者についての内閣府の調査では、介護が必要になった主な原因として、脳血管障害(脳卒中)が17.2%で最も多いという結果が出ています。とくに男性での割合が多く、26.2%です。介護を受けている男性の4人に1人が、脳卒中が原因ということになります。さらに、後遺症の内容も「身体のどちらか半分が動かない」「言葉がわからない」「食事が食べられない」などの重篤なケースが多く、介護者・要介護者双方の負担となっています。
https://news.yahoo.co.jp/articles/8bbf09b129d693fac736e6f9ed09ea40065bb73f